現在、多くの企業が成長市場として挙げるIoT(Internet of Things)。一方で、本当に儲かるのかという声も少なくない。IC設計向けEDA(electronic design automation)市場でシェア1位の米Synopsys社の会長であるAart de Geus氏に、半導体やEDAにとってのIoT市場について聞いてみた。

Aart de Geus氏 日経エレクトロニクスが撮影。
Aart de Geus氏 日経エレクトロニクスが撮影。
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 同氏によれば、半導体市場のけん引役は、コンピューターからモバイル機器(携帯電話機やスマートフォン)に代わり、その次のけん引役として期待されているのがIoTである。ただし、単純なIoTでは、半導体市場は期待するほど伸びないという。

 「エッジ機器に入る部品がセンサーとその信号を単純処理する半導体だけでは、半導体の需要の増加はたかが知れている。エッジ機器をはじめとしてIoTを構成する各層でインテリジェント化、例えば、人工知能やディープラーニング機能を備えるようになれば、処理負荷が大きくなり半導体の需要は大きく伸びる。この意味で、半導体市場の拡大のキーワードはIoTではなく、Smart Everythingとすべきだ」(同氏)。

 各層でインテリジェント化が進むとすれば、ハードウエアとソフトウエアの両面で開発規模の増加が予測される。ハードウエアの開発支援に関しては、SynopsysはEDAツールを開発(買収を含む)・提供してきた。今後もその強化で対応する。一方、ソフトウエアに関しても同社は積極的に開発支援に乗り出している。

 例えば、2014年にはソフトウエアの解析・検証ツール大手の米Coverity社を買収した(日経テクノロジーオンライン関連記事)。また、さまざまな機器がつながるIoTではセキュリティーの担保が重要になることから、セキュリティーソフトウエア関係の買収も進めている。例えば2015年4月にはフィンランドCodenomicon社を買収し、脆弱性をチェックするための「Defensics」や「AppCheck」を得た(日本語ニュースリリース1)。同年7月には仏Quotium社の資産の一部を買収することで、同社の脆弱性チェックツール「Seeker」と研究開発要員を得ている(ニュースリリース2)。さらに、セキュリティー関連では、Barack Obama氏とGeorge W. Bush氏の両米国大統領のサイバーアドバイザーを務めたHoward A. Schmidt 氏を、SynopsysのSecurity Advisorとして迎え入れた(日本語ニュースリリース3