ASIC開発ではさまざまな困難に遭遇する。このため、当初に想定した期間で開発できないことはよくある。なぜ上手くいかなったかを分析して、次につなげる。大事なことである。設計工程別に失敗の理由を突き止めて、その改善策を打った経験を、講演で聞くことができた。

図1●講演する森誉浩氏 日経エレクトロニクスが撮影。スクリーンは東芝マイクロエレクトロニクスのスライド。
図1●講演する森誉浩氏 日経エレクトロニクスが撮影。スクリーンは東芝マイクロエレクトロニクスのスライド。
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 この講演は「Design Solution Forum 2015」(2015年10月2日に新横浜で開催)で、東芝マイクロエレクトロニクスの森誉浩氏(システムソリューション統括部 システムソリューション開発技術部 システムソリューション開発技術第一担当)が行ったもの(図1)。講演タイトルは「製品開発における失敗事例に基づく成功への導き」だった。IC設計技術関連の講演会でユーザーの発表は、概ね、課題を克服して成果を挙げたという内容だが、今回の森氏のように複数の工程に関してまとめて発表するというのはあまり例がない。

要求仕様の変更に泣かないために

図2●仕様変更リスクへの対策 東芝マイクロエレクトロニクスのスライド。
図2●仕様変更リスクへの対策 東芝マイクロエレクトロニクスのスライド。
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 まず、要求仕様段階。問題は要求仕様の変更である。以前は顧客の要求仕様が、ハードウエア設計者に渡されるだけだった。当然、要求仕様には変更が入る。対応に苦慮する設計者。予定通りの設計スケジュールでは開発できなくなる(図2)。

 そこで、こうした事態にならないように、仕様の最終決定に時間がかかりそうな箇所を事前に顧客から聞くようにした。その中でも先に情報が得られると設計者が助かるものを顧客に問い合わせるという、双方向のやりとりを開発着手前に行う。開発が始まると調整が難しいが、事前のコミュニケーションでその調整を行うようにして、開発遅れが発生しにくくした。