THK 常務執行役員 IMT事業部 事業部長の星野京延氏
THK 常務執行役員 IMT事業部 事業部長の星野京延氏
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作業台に張られた3点のクロスマーク
作業台に張られた3点のクロスマーク
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台の高さが変わっても作業を続けることができる
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 「現行の産業用ロボットの進化版ではなく、人の活動領域に持ち込めるロボットを目指した」(THK 常務執行役員 IMT事業部 事業部長の星野京延氏)。2015年9月30日に開催された「FACTORY 2015 FALL」で、同氏は「生産現場に革新をもたらす~次世代人型ロボットとは~」と題して講演を行った。

 工場の生産効率を高めるため、産業用ロボットを導入する企業が増えてきた。産業用ロボットといえば、力強さをイメージする人が多いだろう。しかしTHKグループのTHKインテックスと川田工業が共同開発する産業用ヒト型ロボット「NEXTAGE」は「ゆっくりと動き、力が弱い」(同氏)のが特徴である(下記の動画参照)。製品化は、大手家電メーカーや中小企業が1日の作業者を集めることに悩んでいるという相談を受けたのがきっかけだった。

 NEXTAGEには頭部に2つ、腕に2つのカメラが装着されている。ロボットはカメラを通して、作業台などに張られた「クロスマーク」を認識することで自らの位置や作業対象までの距離を測定している。クロスマークは三角を作るようにして張られ、三角の重心位置などを用いて物の位置や距離を把握する。これにより、物が少し動いても新たにティーチングする必要がないようにした。従来、産業用ロボットの利用に柵が必要だったが、力の弱いNEXTAGEには不要である。

 人手不足を解消するというアプローチはユーザーサイドの経営層の関心を集め、現場に導入検討が指示される企業も出てきた。しかし、工場現場で働く従業員は従来と導入目的が異なるこのロボットに戸惑ったという。今まで現場には生産性の向上を目指し、製造スピードや精度の高いロボットを入れることが多かった。しかし、それよりも性能が劣るロボットを使うことになったからである。「『現場に不要なものを売り込まないでくれ』とも言われた」(同氏)。

 そこでTHKはロボットを社内で使ってみて、顧客にどうアピールしていくべきか考えた。失敗はあったものの「既存の現場にそのままロボットを持ってこられるようにした」(同氏)。これを実現するために、例えば、ロボットの導入時にその周りを自動機で囲わないで済むように設計したという。これにより、2人いた作業員を1人で済むようにし、深夜の現場にも導入してもらうことで人件費を削減する。

 星野氏は「現状ではロボットは機材として購入されたり、リース業者によって貸し出されたりしている。このヒト型ロボットは、人と同じように人事部で採用されたり、人材派遣業者を通して現場に手配されたりするように売り込みたい」と語った。

NEXTAGE
■変更履歴
記事初出時、「THKの産業用ヒト型ロボット」と記述していましたが、正しくは「THKグループのTHKインテックスと川田工業が共同開発する産業用ヒト型ロボット」です。お詫びして訂正します。記事は修正済みです。 [2015/10/07 16:00]