工場や産業機器のスマート化によって、その“神経”に当たる通信ネットワークでも変革が起きようとしている。Ethernetベースの次世代通信規格「Time-Sensitive Networking(TSN)」が、産業用IoTのネットワーク標準に名乗りを上げているのだ。

 「産業用IoTでは、これまで交わることのなかったOT(Operational Technology)とIT(Information Technology)の世界を単一のインフラで統合する必要がある。そのためのネットワーク標準としてTSNを提案する」。米National Instruments(以下、NI)社が2016年8月に開催したプライベートイベント「NIWeek 2016」において、同社Chief Marketing ManagerでTSNを担当するTodd Walter氏はこう高らかに宣言した。

 従来、工場などの現場を制御するOTの世界と、基幹系システムを中心とするITの世界では、それぞれの目的や環境に最適化した全く異なるネットワークが構築・運用されていた。しかし、スマート化によってOTとITの融合が進めば、「両方に適合できる汎用性の高いネットワーク標準が必要になる」と同氏は指摘する。それこそがTSNというわけだ。

 TSNは、NI社独自の技術ではなく、Ethernetの拡張版としてIEEE 802.1で規格化が進められているオープンな技術である。NI社は、その規格化を積極的にリードしているグループの1社だ。もともとは自動車の制御系への導入を目指して規格化が始まったが、現在は工場や産業機器を想定した議論が活発になっている1)

* IEEE 802.1は、Ethernetの主にデータリンク層の規格化を担う作業部会。