国土交通省は2018年1月31日、「無人航空機の飛行に関する許可・承認の審査要領」(以下、審査要領)を改正し、同日から施行した。ドローンやラジコン飛行機などの「無人航空機」を多数の人が集まる場所の上空で飛行させる際の具体的な安全対策を追加した。
改正のきっかけとなったのは2017年11月4日、岐阜県大垣市で開催されたイベントでドローンが落下して3人が負傷した事故*1。ドローンの操縦者やイベントの運営者といった人以外の第3者が傷害を負った国内初の事案である1)。ドローンが落下した原因は現時点で不明だが、落下した場合の安全確保という点で、既存法規の不十分さが露呈した事故だった。
立ち入り禁止区画の設定を明確化
改正された審査要領では、ドローンなどの無人航空機をイベント会場など不特定多数の人が多数集まる場所の上空で飛行させる際に講じるべき安全対策として、立ち入り禁止区画や機体要件、風速・速度の制限などを具体的に規定した*2。例えば、立ち入り禁止区画については飛行高度に応じた水平距離を定量的に定めている(図1)*3。改正前の審査要領では「催しの主催者などとあらかじめ調整を行い、観客、機材などから適切な距離を保って飛行させること」とは書かれていたが、「適切な距離」についての具体的な定義はなく、主催者などの判断に委ねられていた。
実際、大垣市での落下事故では、ドローンは上下に垂直移動するだけの予定で、主催者は離着陸地点を中心とした半径3mの範囲を立ち入り禁止区画として制限していた。この対応自体は、当時の法規に矛盾するものではない。ところが、事故を起こしたドローンは斜め下方向に落下し、立ち入り禁止区画外の観客にぶつかってしまったのだ。
立ち入り禁止区画の大きさを具体的に決めるに当たっては、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の協力を得て試算した結果を活用した。同試算では、異常が発生した位置から落下地点までの水平距離が最も大きくなると考えられる、斜め45度上方向に飛行している状況を想定(図2)。異常時に操縦者が飛行を停止するまでの時間を2秒、落下時の空気抵抗率(抗力係数)を0.5などとして落下地点を試算した。