(画像:Getty Images)
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IT分野で普及したEthernet。今後は自動車内のネットワークにも浸透し、車載でも主流のネットワーク規格になりそうだ。それに伴い、車載アーキテクチャーも大きく変わる。そこで、大手車載部品メーカーのドイツContinental社に、車載Ethernetの動向や将来の車載アーキテクチャーなどについて、2回にわたり解説してもらう。(本誌)

 自動車分野における通信は、これまで基本的に車内に閉じていた。しかし、自動運転技術が普及すると、自動車はクラウド側に常時接続され、そこから協調して様々なサービスを受けられるようになる。言い換えれば、今後自動車はネットワークの一部になることを示している。

 クラウドサービスを自動車に提供するために、情報通信(IT)分野で使われているEthernetが自動車でも使われるようになる。既に、OBD(自己故障診断)やソフトウエアアップデートなどの用途でEthernetが活用されている。これらはあくまで外部との通信に利用しているので、IT分野のEthernet技術を流用しているにすぎない。今後は、車内のネットワーク用に開発された「車載Ethernet」が普及していく。

 米Strategy Analytics社が2016年4月に発表した、自動車に搭載されるEthernetポート数の予測によると、2020年には世界で生産される自動車の約60%にEthernetポートが搭載されるという(図1)。この比率は年々高まり、2023年にはほぼ全ての車両がOBD用のEthernetポートを搭載すると同社はみている。OBDポートは1台の自動車に1つだけだが、カメラ用のネットワークやインフォテインメントなどに向けた車載Ethernetでは、1台の自動車に複数のポートが搭載される。このため、自動車に搭載されるEthernetポートは急速に増えていく。2020年ごろからは、バックボーンネットワークにEthernetが適用され始める。

図1 Ethernetのポートは急速に増加
図1 Ethernetのポートは急速に増加
Strategy Analytics社によれば、自動車に搭載されるEthernetポート数は今後急増する。例えば、2020年には世界で生産された自動車の約60%に、OBDといった診断用のEthernetポートが搭載されるという。カメラ用のネットワークやインフォテインメントなどに向けた車載Ethernetのポートも、増加していく。
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 このように、車載Ethernetは自動車分野における主流のネットワーク規格になる。それに伴い、車載アーキテクチャーも変わっていく。そこで本稿では、我々ドイツContinental社が考えている車載Ethernetの動向と将来の車載アーキテクチャー、およびそれを実現する技術について、前編と後編の2回に分けて解説したい。