セコムは自社開発したドローンによる警備サービスを2015年12月に開始した。2016年には、さらに高い位置から現場を監視できる飛行船も実用化する。これまでもIoTの先駆けと言えるサービスを次々に手がけてきた同社には、電機メーカーとは異なる価値観が息づく。研究所を率いる小松崎氏が、同社の哲学を語る。

小松崎 常夫(こまつざき・つねお)
小松崎 常夫(こまつざき・つねお)
1978年に早稲田大学理工学部を卒業しセコムに入社。セキュリティー事業では地域本部長や本社の技術部門・営業部門の責任者を歴任。新規事業の企画推進も数多く担当し、医療・防災・地理情報などの事業に携わる。2009年にIS 研究所所長に就任し、「先端技術でサービスイノベーション」をモットーに研究開発を担当する。2014年に常務執行役員に就任。(写真:加藤 康)

――12月に始めたドローンによる警備サービスは、御社のサービス全体の中でどういう位置付けなんですか。

 まず、我々がどういう考え方でやっているのかをお話します。僕らは簡単に言うと、やるべきことから入る会社なんですよね。

 セコムグループは、現在社会に提供しているサービスの総覧を年に1回アップデートをして、五万数千人の社員全員に行き渡らせているんです。その真ん中にセキュリティーが書いてあり、周囲に防災事業やメディカル事業など、全部で固まりが8個あります。ただ、国際事業というちょっと違ったくくりがあるので、サービスカテゴリーとすると7つなんですね。

 これは偶然ではなくて、(創業者の)飯田(亮氏)というか、セコムが実現したいことは、簡単に言うと人々の幸せに貢献したいんですね。もう少し正確に言うと、幸せな状態を壊す要因がありますよね。それは災害であったり、ご家族の病気であったり。私たちの役割は、幸せな状態を壊すであろうことを、少しでもゼロに近づけることで幸せ作りに貢献する会社というのが私の理解なんです。

 そこで幾つか大事なポイントがあるんですが、それを人海戦術でやることは選択していないんですね。いつでも人間が真ん中にいるサービスではあるんですが、できる限り最先端の技術を積極的に使って、人の力を増幅した形でイノベーティブなサービスを提供してきたんじゃないかなと思うんですね。

 一例を挙げますと、コンピューターネットワークを使ったオンラインセキュリティーシステムでは、今200万軒の建物を警備させていただいているんですね。これを人手でやると、最低でも1000万人必要なんですよ。計算根拠は、1カ所に人が24時間常にいる状態を作る。これを「24時間1ポスト」と私たちは呼んでいますが、それのためには約5名の人間が必要なんです。そうすると、200万件を人手でやったら、最低でも1000万人必要となる。実際には小さな建物だったら1人でいいのかもしれませんけど、大きな建物をやるとしたら何十人は必要ですよね。だとすると、結局少なく見たって数千万人なんですよ。

 びっくりしちゃうでしょう。1億3000万人弱の赤ちゃんまで入れた人口の、例えば5人に1人が警備員とか、10人に1人が警備員みたいな話なんですよ。ということは、コンピューターネットワークを使った警備システムを世の中に提供したことによって、警備にかかわる人間の力を、約1000倍ぐらいに増幅しているんです。警備員の数は正確には申し上げていないんですけど、約2万人ぐらい。仮に(人手でやった場合が)1000万人なら500倍ですよね。2000万人だったら1000倍です。社会から見たときにこれがすごく大きな価値じゃないかなと思っています。