第5世代移動体通信システム「5G」が研究開発から商品化の段階に移りつつある。2019年中に商用展開が始まる可能性が出てきた。5Gは、仮想現実感(VR)、IoT、M2M、コネクテッドカーのような新しい用途を想定。最終的には20Gビット/秒もの超高速・大容量の「eMBB」、1平方km当たり100万台をつなぐ「eMMB」、1msもの超低遅延の「URLCC」といった3つのユースケースに対応する予定だ。ところが事業としての成功を疑問視する声は意外と多い。携帯電話サービスには、偶数世代は大成功し、奇数世代は普及に苦労するとの不吉な経験則もある。今回は5Gがビジネスとして成功するための条件を考えた(表1)。

表1 「商用化迫る5G、何に使うの?」をテーマにしたテクノ大喜利の回答
表1 「商用化迫る5G、何に使うの?」をテーマにしたテクノ大喜利の回答
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  そもそも5Gは、今後の電子システムの進歩に欠かせないのか。テカナリエの清水洋治氏は、「無線通信の速度向上がいかに有益か、私たちは1Gビット/秒の無線通信環境が当たり前になった家庭用Wi-Fiなどで十分に経験済みだ。無線通信の速度向上は、議論するまでもなく必要」とした。他の回答者からも、5Gサービスが電子システムの進歩を後押しすることを疑問視する意見はなかった。ただし、広くあまねく5Gの基地局を設置し、なおかつ多くの利用者を獲得できる通信料金でサービスを提供できればの話だ。

  エムジェイアイの前田 悟氏は、「直進性の高い28GHz帯を使う5Gでは、必要な基地局数は4Gよりも増える。つまり、インフラ投資に要するコストは高い。しかも難易度の高い技術を投入した端末のコストも高い。このため、通信費は跳ね上がるのでは。どのように利用者を増やし、投資を回収していくか。その方法が成功の鍵を握る」と指摘した。

  5Gはスマートフォンを今よりも魅力的にし、スマホユーザーの利用拡大によって、サービス地域が徐々に広がっていくと考えがちだ。しかし、アーサー・D・リトルの三ツ谷翔太氏は、「5Gの最大の特徴は、従来の無線通信網では成しえなかった低遅延性や多数同時接続性にある。これらはスマホの進化を直接後押しするわけではなく、新たな用途を創出するために盛り込まれた特徴だ」という点を、5Gの位置付けを考えるうえでの原点に置いた。スマホは数ある5Gの用途の1つで、関連市場の成長をけん引する役割は果たさないというのが同氏の見立てである。多くの回答者が同様の見方をした。