Intel社がついにスマートフォン/タブレット向け主要製品から撤退する。Microsoft社もIoTの美名の下、法人市場に経営資源をシフトしている。アジア最大級の民生機器展示会は、これらの影響をまともに受けた。悲観論が強まる中、成長を牽引してきた企業は、独自の生き残り策に打って出ている。

 2016年6月に台湾・台北市で開催された電子機器の展示会「COMPUTEX TAIPEI 2016」では、これまであまり報じられていない変化があった。それは、イベントコンパニオンの減少だ。特に毎年、たくさんの女性コンパニオンをブースにそろえていた米Intel社が、それを用意しなかった。

 Intel社は原因を明言しなかったが、宣伝費が減ったためとみなして間違いない。同社は2016年4月、莫大な赤字を生み続けた携帯機器向けASSP「Atom」シリーズの新製品開発をついに停止。1997年から断続的に開拓してきた市場の大半を放棄した(表1)注1)。よって同社は、パソコンやスマートフォン中心の展示会であるCOMPUTEXに、大きな費用を投じる意義を失った(図1)。

表1  Intel社がモバイル端末向けプロセッサーに参入し撤退するまで
表1  Intel社がモバイル端末向けプロセッサーに参入し撤退するまで
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図1 「COMPUTEX TAIPEI 2016」のIntel社のブース
図1 「COMPUTEX TAIPEI 2016」のIntel社のブース
Intel社は電子玩具や無線LANルーターを含むスマートホーム向け製品を中心に展示した。
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注1)ただしIntel社は、源流が米AT&T社にある4Gモデム事業を継続しており、iPhoneが採用する見込みだ。業態はASSPの供給ではなく、ASICの供給あるいはチップの受託製造である。

 その代わりにIntel社が大きくアナウンスしたのは、台湾Foxconn(鴻海、Hon Hai)社グループと5G通信設備の参照設計(リファレンスデザイン)を共同開発していくことだった。これは、パソコン向けプロセッサーを「キャッシュカウ」とし、得た資金をクラウド側の製品に投資していく意志の表れだ。キャッシュカウとは、高利益率で成長投資がほぼ不要な事業を指す。

 日本の「CEATEC JAPAN」が家電展示会としては明確に衰退したように、COMPUTEXも変曲点を迎えた。究極の黒物家電ともいえるスマートフォンが普及してパソコン市場が縮小し、しかもスマートフォン市場で従来を大きく超越した安値競争が巻き起こったからだ(別掲記事「ビジネスモデルは『豚に羊毛が生えて犬が金を出す』」参照)。米国や台湾を中心とした企業の勝ち残り策を見ていこう。