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日経Automotive 2016年1月号

Automotive Report

吸湿後の破裂は「分からなかった」

硝安“悪玉論”にタカタ技術者が語る

  • 清水直茂
  • 2015/12/10 00:00
  • 1/2ページ

出典:日経Automotive、2016年1月号、pp.14-15(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

 エアバッグの巨大リコールの原因となったタカタ製インフレーター(図1)。いまだに容器が破裂する原因が分からない中、自動車メーカー各社が今後採用しない方針を表明した。“悪玉”にされるのが、ガス発生剤に使う硝酸アンモニウム(硝安)だ。タカタはなぜ同化合物を採用したのか。

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図1 タカタ製インフレーターは市場から姿を消す
(a)タカタ製の助手席用インフレーター。(b)硝酸アンモニウム。

 自動車メーカー各社の発表に先立つ2015年11月4日、タカタは硝酸アンモニウムを採用したインフレーターの生産を段階的にやめることで、米運輸省道路交通安全局(NHTSA)と合意したと発表した。同化合物を搭載したインフレーターは、いずれ市場から消える。

 本誌は、タカタで「硝酸アンモニウムに最も詳しい」とされる福間大蔵氏(同社インフレータグローバルオペレーション本部顧問)に、同社が硝酸アンモニウムを採用した経緯などを聞いた。

 福間氏はまず、「一般的な硝酸アンモニウムと、タカタが採用する相安定化硝酸アンモニウム(PSAN:Phase Stabilized Ammonium Nitrate)は、全く異なる特性のもの」と釘を刺した(表1)。前者は硝酸油剤爆薬(ANFO)の原料となる化合物で、温度によって体積が変わる相転移と呼ばれる特性がある。ある温度(-18、32、84、125℃)になって相が移ると結晶構造が変わり、体積が増減する。ガス発生剤の形が崩れやすくなり、エアバッグが異常破裂する可能性は高まってしまう。

表1 硝酸アンモニウムとPSANの違い
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 一方、タカタが開発したPSANは、硝酸アンモニウムに硝酸カリウムを混ぜた共晶体を再結晶し、相転移を抑えた「相安定化」を実現したものとする。「119℃以下で結晶相が安定し、相転移しない。硝酸アンモニウムと異なり、安全なもの」(福間氏)と語る。

 スウェーデンAutoliv社やダイセルなどの競合メーカーは、ガス発生剤に硝酸グアニジン系を使う(表2)。同系も相転移しないが、タカタはPSANを選んだ。

表2 PSAN系と硝酸グアニジン系インフレーターの比較
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 福間氏はその理由として、「ガス化率が高いこと」を挙げた。ガス化率とは、固体のガス発生剤を化学反応させたときに気体になる比率のこと。

 ガス化率が高いと、少ないガス発生剤で多くの気体を作れる。インフレーターを小さくしやすい。気体にならない固体(残さ)も少なくなる。硝酸グアニジン系に比べて、「ガス化率は2割以上高い9割近くに達する」(福間氏)という。

 加えて、「環境に良い」とも語る。着火して化学反応した後に生じる気体は、「ほとんど窒素と水だけ」だ。硝酸グアニジン系は、二酸化炭素が出る。

 利点が多いPSANだが、福間氏は「コストは安くない」と主張する。硝酸アンモニウム自体は硝酸グアニジンに比べて安いが、PSANにする過程で「手間がかかる」ことを理由に挙げた。「コストを重視して安全性を軽く見た」とする風潮には、異論を唱えた。

 PSANは、硝酸アンモニウムを水に溶かし、硝酸カリウムなどと混ぜて造る。均一になるように混ぜる工程や、温度や湿度などを厳密に管理するのに多くのコストが掛かるという。またPSANを還元してガスを発生させる物質として、「窒素を多く含むアゾール系の化合物を採用する。これが高い」(福間氏)と付け加えた。

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