いったん眠くなると目を覚ますのは容易ではない。起こし方によっては不快な気分にもなる。こうした居眠り運転が抱える問題に、パナソニックが向き合った。無自覚の浅い眠気の検知や、今後の眠気推移の予測、覚醒状態を維持する眠気制御技術を開発した(図1)。従来の方法に比べて、運転者の快適性を高められる配慮も盛り込んだ。2017年10月にサンプル出荷を開始する。

図1 空調制御でさりげなく目を覚まさせる
図1 空調制御でさりげなく目を覚まさせる
車両への搭載を想定してパナソニックが試作したコックピット。赤外線センサーで人体からの放熱量を検知しており、「温冷感」を推定して快適に眠気を制御できるようにした。照度センサーも備えており、車室内の明るさを測定する。
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 単調な高速道路を走り続けると、否が応でもまぶたは重くなる。「レベル3」の自動運転では周囲を監視する必要がない“アイズフリー”の状態になり、いっそう眠くなるだろう。ただ、運転者に主導権が渡されるときもあるため、目を覚まさせる技術が必須になる。

図2 「眠気レベル」を5段階で評価
図2 「眠気レベル」を5段階で評価
大原記念労働科学研究所による「眠気の5段階等間隔尺度」を用いた。眠気レベルの1~2の検知が難しい。
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 「眠い人を起こすのは非常に難易度が高い。だからこそ、覚醒状態を維持することが重要だ」──。眠気制御技術を開発したパナソニックの楠亀弘一氏(同社オートモーティブ&インダストリアルシステムズ社技術本部センシングソリューション開発センター)は訴える。

 運転者の眠気を検知する技術自体は珍しくない。だが、「覚醒が難しいほどの深い眠気にならないと検知できないものがほとんど」(同氏)だ。今回パナソニックが開発した技術は、本人が自覚していないほどの浅い眠気を検知できるという(図2)。さらに、15分後などに「眠気レベル」がどう推移するのかも予測できる。予測結果を基に、空調を自動で制御して眠くなりにくい環境にする。