電気自動車(EV)の普及を阻む大きな要因が、航続距離の短さと車両価格の高さだ。この課題の解決策として期待される将来技術が、走行中のEVに無線で電力を伝送する走行中給電システムである。東京大学などの研究グループは2017年3月末、インホイールモーター(IWM)を使った走行中給電システムを開発し、報道陣に公開した。同年5月には学会発表も済ませている。
東京大学大学院新領域創成科学研究科准教授の藤本博志氏らは、東洋電機製造や日本精工と共同で、EVの走行中給電システムを開発した。前輪に配置するIWMに、道路からワイヤレス給電するのが特徴だ。
開発したIWMを三菱自動車のEV「i-MiEV」をベースとした実験車両に搭載し、屋外での走行試験に成功した(図1)。道路には寸法1.0×0.5mの送電コイルを3個配置し、約15km/hのスピードで走行できることを確認した。
藤本氏らの研究グループは、2015年5月にワイヤレス給電で駆動するIWMを開発したことを発表している。この時は、車両に搭載したリチウムイオン電池の電力を無線でIWMに送っていた。目的は、配線の信頼性の課題を解決することだった。モーターに駆動電力を供給するための配線や、モーターの回転数を検出するセンサーなどの信号線が繰り返し屈曲するため、耐久性・信頼性の面で不安があった。