2050年のクルマは、現在と全く異なる形になる可能性が高い。事業構造も大きく変わりそうだ。本誌が2016年3月に開催したセミナー「クルマの2050年を徹底予測」で、3人の識者が持論を披露した。
米Google社の持ち株会社Alphabet社や米Apple社といった自動運転車を開発するIT企業の狙いを読み解き、自動車産業の将来を論じたのがGFリサーチ代表の泉田良輔氏である。
泉田氏が2050年に向けて重要になると見るのが、「都市管理」だ。自動運転車の開発競争で主役を担うのが、都市の中で車両を効率的に管理し、運用するサービスを手掛ける事業者と考える。自動運転車は、都市を効率的に管理するための“一端末”という位置付けになる。
そんな時代に勝者になり得る条件として泉田氏が挙げるのが、垂直統合した事業構造の構築である(図1)。クルマの企画から製造にとどまる従来の垂直統合ではなく、エネルギーからデータセンター、サービスプラットフォーム、OS、SoC(System on Chip)、クルマの企画や設計、製造を含めた幅広いものと定義する。Apple社の事業を、自動車産業に置き換えたものと言える。
さらに垂直統合化と並んで重要と考えるのが、資金力だ。都市管理事業とはすなわちインフラ事業。事業のパートナーは、自治体や国となる。投資の回収期間は極めて長く、資金面で不安のある企業の参入は難しい。
資金調達力の目安となる株主資本で見たとき、泉田氏は自動運転時代に都市管理まで手掛けられる目安は10兆円以上と考える(図2)。現時点で該当するのは韓国Samsung Electronics社やトヨタ自動車、米GE社、ドイツVolkswagen社、Alphabet社、Apple社くらいだ。