トヨタ自動車が2017年2月に日本で発売したプラグインハイブリッド車(PHEV)「プリウスPHV( 米国名はPrius Prime)」(図1)。先だって発売した米国版に比べて、実質的な購入価格が大幅に高かった。米国では、戦略的に安くしたことになる。環境対応車で世界を先導した自負がありながら、米国で苦汁を飲んだ過去を払拭する。
2代目となるプリウスPHVの日本における販売価格は約326万円から。米国では装備が少し違うが、2万7100ドル(1ドル=112円換算で約300万円)からと安い(表)。補助金を引くと、米国の実質価格は約2万2600ドル(約253万円)と大幅に安くなる。
米国におけるハイブリッド車(HEV)「プリウス」の価格は約2万4700ドル(約277万円)。リチウムイオン電池の容量が10倍以上大きなPHEVの方が、HEVより安く買えるわけだ。「意欲的な価格で、米国の消費者ならばプリウスではなくプリウスPHVを選ぶのが妥当」(IHSグローバルプリンシパルアナリストの波多野通氏)といえる。米国でプリウスが売れなくなるのを覚悟の上で、PHEVを普及させようというトヨタの強い意気込みが読み取れる。
背景にあるのが、米国カリフォルニア州などの10州が採用するZEV(Zero Emission Vehicle)規制である。トヨタはZEV規制で苦い経験を味わった。
1997年にプリウスを発売して以降、トヨタには環境対応車で世界の先頭を走ってきた自負がある。だが厳しくなるZEV規制によって、2014年にトヨタは規制に達しない分のクレジットを他社などから購入する、事実上の“罰金”を支払う事態に陥った(図2)。同規制の枠組みの中で、トヨタは環境対応車の開発に遅れた企業と見なされたわけだ。各社が2017年末に発売する「2018年モデル」の車両から、HEVはZEV規制の対象車種から完全に外れる。米国でプリウスPHVに戦略的な価格をつけて普及させることで、雪辱を果たす。