輸送機器の軽量化に寄与する新材料の開発を手掛ける「新構造材料技術研究組合(ISMA)」は2016年1月に、最新の研究成果を公開した。これまでにない機能を持つ軽量化素材を開発して自動車ボディーのマルチマテリアル化を加速し、世界的に厳しくなる燃費規制への対応に材料面から挑む。

 世界の燃費規制に対応するため、クルマを軽くする取り組みが進んでいる。その有力な手段の一つが、ボディーに高張力鋼板やアルミニウム(Al)合金、炭素繊維強化樹脂(CFRP)などの軽量化素材を適材適所で使う「マルチマテリアル化」の手法である。

 マルチマテリアル構造のボディーは、ドイツDaimler社や米Ford Motor社など欧米の自動車メーカーが実用化で先行している(図1)。一方、日本メーカーでは「高張力鋼板を使い切る」という考え方が主流であり、Al合金やCFRPなどを使うのは上級車に限られている。しかし日本メーカーからも、「量産車でもマルチマテリアル化を考えたい」という声が高まってきている。

図1 ドイツDaimler社の「メルセデス・ベンツCクラス」
図1 ドイツDaimler社の「メルセデス・ベンツCクラス」
フードやドア、フェンダーなどホワイトボディーの約24%(質量比)にAl合金を使用している。
[画像のクリックで拡大表示]

 こうした状況を受けて、経済産業省が2013年に設立したISMAは国家プロジェクトとして、自動車などの軽量化に寄与する“革新的構造材料”の開発を進めている。鉄鋼・非鉄金属メーカーやCFRPの開発に関わる企業、自動車メーカーなどが参加し、これまでにない特性を備えた軽量化素材の実用化を目指している。