プラットフォームやハイブリッド車(HEV)の大幅刷新、ダイハツの完全子会社化―。トヨタ自動車が、重要な布石を矢継ぎ早に打つ。新興国市場が低迷する中、短期の巻き返しは望めない。だが中期の見通しは明るい。(本誌)

[画像のクリックで拡大表示]

 2015年、トヨタ自動車グループの世界生産台数は前年比2%減の1008万台にとどまった(図1)。日本とASEAN(東南アジア諸国連合)市場の販売台数が減ったことが要因だ。2015年度通期でもゼロ成長を見込む。市場環境が悪い上に新興国を中心に為替の変動が激しく、短期には業績を高めにくい。だが中期で見ると、着実に成長する環境が整いつつある。

図1 トヨタグループの世界生産台数の見通し
図1 トヨタグループの世界生産台数の見通し
緩やかに増えて、2020年に1100万台に達すると予測する。
[画像のクリックで拡大表示]

 環境問題が深刻化する中、得意とするハイブリット車(HEV)の需要が、成熟市場から新興市場に拡大する兆しがある。特に2020年に向けて“HEV不毛の地”と言える中国で期待が高まる。

 市場が低迷する新興市場に向けた布石も打つ。2016年2月、ダイハツを完全子会社化すると発表した。トヨタが苦手とする新興国向けの低価格小型車は、今後ダイハツが開発していくことになるだろう。同社の技術を上手く生かせれば、巻き返せる可能性は高い。

 さらに高級車ブランドのレクサスが、そのブランド価値を高めている。ドイツ高級3ブランドと一線を画す戦略が奏功する。「高級SUV(スポーツ・ユーティリティー・ビークル)はレクサス」と言える地位を築き始めた。