パワーステアリングは、運転者のステアリングホイールの操舵力を支援するシステム。従来の油圧式に代わり、最近増えているのがモーターを使う電動式である。モーターを配置する位置によって主に、コラム式、ピニオン式(デュアルピニオン式含む)、ラック式の3種類がある(表)。

表 EPSの主な方式
表 EPSの主な方式
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 パワーステアリングは、元々エンジンで駆動するオイルポンプの油圧を使って操舵力を支援していた。1980年代後半に初めて電動化され、軽自動車に採用された。今や乗用車のほとんどが、電動パワーステアリング(EPS)を採用するほどになった。燃費性能向上のために、エンジンを停止したまま走れるようにしたフルハイブリッド車(HEV)、そして電気自動車(EV)の普及も、EPSの開発・実用化を後押しすることとなった。

 最近はアイドリングストップ機構の搭載が一般化しつつあり、油圧ポンプを搭載し続けるのが難しいこともEPSへの移行が進む理由の一つだ。電動化すれば、操舵アシストのためにエンジンを作動させ続ける必要がなくなる。

 電動化するメリットは、オイルポンプを駆動するエンジンの駆動損失低減、システムの簡素化による軽量化、油圧の作動音の解消による静粛性向上、油圧系のメンテナンスが不要になることなどもある。

 ただ、油圧式のパワーステアリングにモーターを組み合わせた電動油圧式があるなど、油圧式も一部で根強い需要がある。油圧は大きな力を発生しやすく、衝撃の緩和や減衰など優れた部分があるためだ。電動式に完全移行するにはもう少し時間がかかりそうだ。