クルマの電動化が進み、搭載する電子機器が増えるにつれて、EMC(電磁両立性)評価の重要性が増している。また試験項目の追加に伴って、測定を担当する技術者の負担が増している。こうした状況を受けてTDKは、測定作業の効率化などを可能にするEMC測定システムを開発した。(本誌)

 現在の自動車には、ECU(電子制御ユニット)など様々な電子機器が搭載されている。自動運転やワイヤレス給電への対応は、電子機器のさらなる搭載に拍車をかけ、電子回路に対して電磁干渉が起こりやすくなっている。電磁干渉で電子機器が誤動作を起こすと、重大事故につながる可能性もあるため、EMC評価の重要性が増している。

 EMC評価とは、電磁的な「不干渉性」と「耐性」を測定することで、エミッション試験とイミュニティー試験の二つに分かれる。前者のエミッション試験では、電子機器が動作する際に発生する、周辺の電子機器の動作に悪影響を与える可能性があるノイズの大きさを測定する。後者のイミュニティー試験では、外部から到来するノイズや電磁波によって、電子機器の動作が不安定になるかを評価する。

 そして、これらのノイズには電線を伝わる「伝導ノイズ」と空中を伝わる「放射ノイズ」があるが、本稿では放射ノイズに関するEMC評価に主眼を置くことにする。

 その放射ノイズを対象にした自動車のEMC評価に関する国際基準については、国際連合(UN)が「ECE Regulation No.10(R10)」を発行している(1)。同基準では、放射エミッション試験については「CISPR(国際無線障害特別委員会)規格」を、放射イミュニティー試験に関しては「ISO(国際標準化機構)規格」を参照している(図1)。

図1 自動車のEMC規格
図1 自動車のEMC規格
自動車のEMC試験は、実車と車載部品(サブアッセンブリー)向けに分かれ、さらに電磁ノイズの外部への放射・伝導を測定するエミッション試験と、外部からの電磁ノイズ・電磁波に対する耐性を評価するイミュニティー試験に分かれる。
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 このうち放射イミュニティー試験では、R10に記載されている電界強度値よりも高い電界強度で試験する場合も少なくない。また、先に述べた自動車へのECU搭載数の増加や電気自動車(EV)に対するEMC試験項目の追加などに伴い、EMC測定者の負担は増加している。

 このような状況を受けてTDKは、EMC測定作業の効率化と高い電界強度における試験を可能にする放射イミュニティー試験システムや放射エミッション試験システム、EUT(Equipment Under Test:試験状態にさらされる機器)の誤動作を自動で監視するシステムなどを開発し、自動車メーカーや部品メーカーに提供している。