車載ソフトウエアプラットフォーム規格「AUTOSAR」が、「いかに活用するか」の段階に入った。同規格の国内の普及に2006年から携わってきた筆者(ドイツETAS社日本法人所属)が最新動向や導入のポイント、管理層・経営層に求められる役割について解説する。 (本誌)

 クルマの電動化が進み、ソフトウエアの重要性が高まっている。量産車には数十個、またはそれ以上のECU(電子制御ユニット)が使われており、その振る舞いは多くのソフトウエアにより支配される。最近の先進運転支援システム(ADAS)の高度化や自動運転技術の登場により、ソフトウエア開発の規模と複雑さは増大し続けている。こうした状況に企業単位で対応するには限界があり、業界全体で取り組み、活路を見出す必要がある。

 「AUTOSAR(AUTomotive Open System ARchitecture)」は、これらの課題の解決のために生まれた車載ソフトウエアプラットフォーム規格である。ソフトウエアの再利用や業界内での授受・流通を促進することによって、今後の開発の負担を軽減することを目指し、世界中から自動車関連の200以上の企業・団体が参加する組織「AUTOSAR Development Partnership」において、各種標準化活動を行っている。具体的な標準化作業は、以下の3分野が柱になっている。

(1)Software Architecture
(2)Methodology(体系的な方法論)
(3)Application Interface(AI)

 AUTOSARでは車載向けソフトウエアを、「BSW(Basic Software)」と「RTE(Runtime Environment)」「Application Layer」という3階層に分けている。このうち上位層のApplication Layerは、車両に搭載されるアプリケーション機能を実現するソフトウエアコンポーネント(SW-C)から成る。中間層のRTEは、SW-C同士あるいはSW-CとBSWなどの間を接続するインターフェース機能を提供する。

 下位層のBSW はハードウエアに依存しない部分(サービス層とECU抽象化層)と、ハードウエアに依存するドライバー層(Microcontroller Abstraction Layer: MCAL)および、リアルタイムOSで構成され、ECUに一般的に必要な基本機能を提供する。セキュリティーや安全関連のメカニズム、ハードウエア抽象化を含む基本ソフトウエア群として、現在約90のBSWがある。Application Layerから見てRTEより下の層は抽象化されていることから、SW-Cは基本的にECUへの配置やハードウエア構成に依存しない(図1)。

図1 AUTOSAR Classic Platformのソフトウエアアーキテクチャー
図1 AUTOSAR Classic Platformのソフトウエアアーキテクチャー
ソフトウエアをBSW とRTE、Application Layerの3階層分けている。
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 ハードウエアへの依存性を局所化することで、BSWとSW-Cは高い再利用性を持つ。さらにMethodologyにより、開発作業の流れとそこで使用される各種設計情報(AUTOSAR XML)が標準化され、各種インテグレーション作業や自動化が容易になる(図2)。

図2 従来型開発とAUTOSARの比較
図2 従来型開発とAUTOSARの比較
Methodologyにより、開発作業の流れとそこで使用される各種設計情報(AUTOSAR XML)が標準化され、各種インテグレーション作業や自動化が容易になる。
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