「自動運転車が普及したとき、果たして鉄道はどうなるんだろう」─。

 昨年、NEの特集記事の取材で米シリコンバレー地域を訪れたとき、このような疑問が浮かびました。同地域では、米Google社や米Apple社などそうそうたるIT企業が、自動車メーカーとともに自動運転車に関する技術開発を積極化させています。センサーや通信部品を手掛けるデバイスメーカーや、AI(人工知能)関連の取り組みも活発で、遠くない時期に自動運転車が実用化されるという勢いを強く感じました。

 自動運転車の活用が進めば、近距離の都市間移動などは、自動車のほうが小回りが利いて便利な場合もあります。長距離の都市間移動は別として、コミューター的な移動手段としては、EV(電気自動車)など小型自動車の活用が広がりそうです。このとき、鉄道は利用客が減り、収益が低下してしまうのでしょうか。

 そうした見方に対する鉄道側の答えが、今号の特集記事「感じる鉄道」です。編集部内の企画段階では「鉄道IoT」とも呼ばれていた特集で、IoT(Internet of Things)やビッグデータの技術を用いて鉄道運行の効率化や利便性向上を目指す動きを、中島記者が現場取材からまとめています。乗降者数が世界一多い駅と言われる「新宿駅」など、人が集まる「商圏」としてのポテンシャルを生かす動きも要注目です。

 今号はさらに、話題沸騰中の「iPhoneに有機EL」を第2特集として掲載しました。これまで液晶ディスプレー中心だったApple社が、いよいよ有機ELをスマホに活用するという見方が強まっています。中国では、ディスプレーメーカーが続々と有機EL量産に向けてシフトを始めました。そのとき、どの企業がチャンスをつかむのか。弊社で最もディスプレー業界に食い込んでいる(?)、田中デスクがまとめていますので、是非ご一読頂きたい内容です。

 前号から初登場した、勢いのあるベンチャー企業を紹介する新コラム「Challenger」では、宇宙産業を果敢に攻めるアクセルスペースを取り上げました。「地球観測分析における“Apple”を目指す」という同社。グローバル展開など、ワクワクするインタビュー内容です。なお、新コラムのスタートに伴い、日経BPクリーンテック研究所発のコラム「Emerging Biz/Tech」の掲載は前号までとしております。今後も、新しい企画/コラムを続々と立ち上げて参ります。ご期待ください。