東京オリンピックの開催される2020年に向けて、国内では建設ラッシュが続いており、建築現場での人手不足が課題になっている。人手不足解決に向けて、大手建設会社の大成建設が、作業負担を軽減できるシステムを開発した。ヘッドマウントディスプレー(HMD)を活用した、測量向けナビゲーション(ナビ)システム「T-Mark.Navi」である。同システムで実証試験を実施したところ、作業員を従来の半分に、作業時間を約2/3にできた。つまり、工数(作業員数×時間)が半分以下になる計算だ。

 今回のナビシステムは、「墨出し」と呼ばれる、建設現場での測量に向けたもの。墨出しによって「測点」と呼ぶ点を決め、測点を基にして各構造体や各部材の設置位置を決める。

 墨出しには大きく2つある。墨出し作業において基準となる線である「親墨(おやすみ)」と、親墨を基に設定する「子墨(こすみ)」である(図1)。子墨は作業ごとに、例えば外壁やエレベーター、サッシ、シャッターなどの設置といった各工事で実施する。大規模な建築になるほど子墨の回数が増えるので、今回のナビシステムを導入する利点が大きくなる。

図1 墨出し(図:大成建設)
図1 墨出し(図:大成建設)
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 例えば、大成建設の本社がある「新宿センタービル」のような高層ビルの建設において、測点の数は「数億点」(同社)になるという。かかわる業者も多い。新宿センタービルのような規模で、およそ200~300業者になるという。そのすべての業者が、墨出し作業に慣れているわけではない。今回のナビシステムであれば、そういった習熟度の差を縮めることもできるとみる。