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 米Apple社が2017年3月に公表した、2016年におけるサプライヤーリスト。今回も、リスト入りした企業と外れた企業から同社の戦略が透けて見える注1)。新たなリスト入り企業では、Apple社と結び付きが強いEMS/ODM大手傘下の2社が目立つ(表1)。

注1)リスト公開の目的は、自社とサプライヤーが社会規範を守っているか、外部チェックを容易にすること。
表1 Apple社が加えた/切ったサプライヤー
表1 Apple社が加えた/切ったサプライヤー
Apple社は、2016年に供給業者22社(過去5年間で初の企業が14社、取引再開企業が8社)を加えた。外したサプライヤーは19社。表は2015年と2016年の同社のサプライヤーリストに基づく。リスト中のサプライヤーからの合計調達額は全体の97%以上を占めた。
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 「PlayStation 4」の無線LANモジュールなどを製造する台湾AzureWave Technologies社と、レンズメーカーのカンタツだ。AzureWave社は台湾Pegatron社が実質的に40%の株式を握る。カンタツの大株主は台湾Foxconn(Hon Hai Precision Industry、鴻海)社傘下のシャープで、2016年12月にカンタツの第三者割当増資を引き受け、出資比率を18%から44%に引き上げた。

 Apple社のカンタツへの期待は、高価格帯レンズで他を圧倒する台湾Largan Precision社に値下げを迫れる状況をつくること。ただ、Largan社の収益性は極めて高く、一筋縄ではいきそうもない。台湾本社の従業員は2017年に、通常のボーナスとは別に「員工分紅」(株主総会で決定するボーナス)を平均で約90万台湾ドル(約325万円)受け取る予定だ。カンタツは、高価格帯ではLargan社、中高価格帯では台湾Genius Electronic Optical社や韓国Cowell社と競う二正面作戦を迫られる。

 表1では除いたが、買収によってリスト入りした企業がある。例えば、大手板金業者の中国Dongshan Precision Manufacturing社である。液晶バックライトなども手掛ける同社は、Apple社と取引がある老舗フレキシブル基板メーカーの米Multi-Fineline Electronix(MFLEX)社を2016年に6億1000万米ドルで完全子会社化した。

 逆にリストから消えた注目企業は米NVIDIA社。ノートパソコンでは米Intel社のチップセットの処理能力で十分なこと、Apple社がGPUを独自開発していることが背景にありそうだ注2)。実際、Apple社にGPU向けIPコアを提供する英Imagination Technologies社は2017年4月、Apple社から15~24カ月以内に取引を止めると通知されたと公表した。

注2)ミニタワー型パソコン「Mac Pro」では、米AMD社の製品を用いている。