テラヘルツ(THz)波でモノや生体を見ることができるフレキシブルTHzカメラが登場した(図1)。感度が既存のTHzカメラの数十倍と非常に高く、撮影対象の黒体輻射を映像にできる。このため、これまで出力をなかなか高められなかったTHz波の〝照明”が不要だ。しかもシート状でフレキシブルに曲げられるため、モノや生体の曲面に沿ってシートを密着させることができる。
用途は、(1)曲面を持つモノや歯の表面の傷や穴を検知、(2)皮膚や頭部に密着させて汗腺の変化を利用した検査、血行状態のチェック、皮膚ガンの有無の検査、脳の検査など、(3)THz波で材料の組成が分かることを利用した薬の検査など、を想定する。開発した東京工業大学 准教授の河野行雄氏は、「薬の検査向けにメーカーと試作品を作っている段階。2~3年のうちには(2)のような医療・ヘルスケア向け製品も実現できそう」という。
THz波は波長が10μm~1000μm、周波数にして0.3THz(300GHz)~30THzの領域の電磁波を指す。ちょうど電波と赤外線の中間的な位置付けで、開発が最も遅れていた。