2016年9月16日、国土交通省は「『機械式立体駐車場の安全対策に関するガイドライン』の手引き」を公表した。これは、国土交通省や消費者庁、業界団体である立体駐車場工業会などにおける安全性向上の取り組みを、一般の人にも分かりやすくまとめたものだ。

2012年の事故をきっかけに

 まず、機械式立体駐車場の安全性向上に向けた取り組みの経緯を見てみよう(図1)。発端は、2012年4月に発生した事故だった。大阪府茨木市のマンションに設置されていた機械式立体駐車場で、自動車を載せるパレットとフレームの間に3歳児が挟まれて死亡したという事故である。この事故を受けて、国土交通省と消費者庁は同年5月に機械式立体駐車場の利用者に対する注意喚起を実施した1)

図1 機械式立体駐車場の事故に関する主な取り組みの経緯
図1 機械式立体駐車場の事故に関する主な取り組みの経緯
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 さらに、2013年11月には国土交通省が「機械式立体駐車場の安全対策検討委員会」を設置し、翌2014年3月に「機械式立体駐車場の安全対策のあり方について報告書」および、同委員会での検討成果を踏まえたガイドラインを発行した。同ガイドラインは、製造者(メーカー)、設置者、管理者、利用者が早期に取り組むべき事項をまとめたもの。同年10月にはその改訂版も発行された。今回発行された手引きは、このガイドラインを補足するものである。

 一方、消費者庁の消費者安全調査委員会が、「機械式立体駐車場(二段・多段方式、エレベータ方式)で発生した事故調査報告書」を2014年7月に公表している。同報告書では6件の事故について原因調査を行うことで重大事故の基本パターンを網羅した。さらに2015年1月には、機械安全およびヒューマンファクターズを基本則とした解析・評価の方法を詳細に解説した「分析の考え方の解説」を発行している(別掲記事参照)。

 以下では、消費者庁の事故調査報告書で明らかになった事故原因と再発防止策の概要を説明する。