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HOME有料会員向けトップ > トロリー線切断で新幹線63本に遅れ、特異な位置での停車と接触不良で大電流

日経ものづくり 2017年9月号

事故は語る

トロリー線切断で新幹線63本に遅れ、特異な位置での停車と接触不良で大電流

  • 木崎 健太郎
  • 2017/08/31 00:00
  • 1/5ページ

出典:日経ものづくり、2017年9月号、pp.83-86(記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)

2017年6月21日、大雨のためダイヤが乱れていた東海道新幹線の京都~新大阪間で列車に電気を供給するトロリー線が切れる事故が発生した。上下線合計63本の列車に172~365分の遅れが発生、5万1000人の乗客が影響を受けた。原因は、トロリー線2本が並行する「エアセクション」への停車だった。

 当日は大雨で3時間半の運転見合わせがあり、再開したもののダイヤは大きく乱れ、事故直前には新大阪駅手前の下り線で列車が数珠つなぎになっていた。そのうちの1本、「のぞみ241号」の12号車のパンタグラフの位置で19時48分にトロリー線*1が切れた。

*1 トロリー線 列車のパンタグラフに接触して電力を供給するための電線。これをつるしたり支持したりする吊架線、ハンガー線などを合わせて架線と呼ぶ。

 その時点では、JR東海はトロリー線が切れたことを把握できなかった。のぞみ241号が動いた19時53分、切れたトロリー線が同号の屋根に触れ、地絡が生じたため停電。パンタグラフ左右にある側壁などには、地絡電流により穴が開いた(図1)。

図1 切れたトロリー線と車両の損傷
(a)はトロリー線(直径15.49mm)の断線箇所。2本の細い線は、トロリー線の摩耗を検出するために埋め込んである検知線。(b)は「のぞみ241号」12号車のパンタグラフの擦り板に残るアーク痕。(c)はパンタグラフの左右にある側壁のうち進行方向左側に、切れたトロリー線が触れて電流により生じた穴。大きいもので直径20mm。 (写真:JR東海)
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 その後、トロリー線が車体から離れたためか、送電が可能になったことから、停電の原因が不明のまま運転を再開。しかし、後続の「のぞみ391号」が現場に差しかかった時、切れたトロリー線が5号車のパンタグラフ(1列車に2つあるパンタグラフのうち新大阪寄り)周辺に触れ、再び地絡により停電が発生。やはり側壁に穴が開いた。

 係員が現地で原因を調べて架線切断を把握し、復旧するまでに5時間を要した(表)。トロリー線が切れた直接の原因は、パンタグラフとの間で大電流が流れ、ジュール熱*2とアーク放電*3が生じたことだった。

表 トロリー線断線事故の経過
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*2 ジュール熱 導体に電流を通したときに発生する熱。その大きさは電流値の2乗と抵抗値の積に比例する。

*3 アーク放電 電極間で気体分子がイオン化し、プラズマになってその中を電流が流れる放電(絶縁破壊)現象。金属を溶かして蒸発させるほどの高温になることがある。この現象を意図的に利用し、金属など導体の材料を除去するのが放電加工。

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