植物由来の新材料であるセルロースナノファイバー(CNF)の利用が大きく広がろうとしている。CNFの複合材料(CNF強化樹脂)を造る生産プロセスが大きく進展し、製造コストが大幅に下がりつつある。これにより、自動車分野での実用化が見えてきた。CNF強化樹脂以外でもCNFが持つ変幻自在ともいえる優れた特性を利用しようと、さまざまな企業が製品開発を始めている。用途の拡大に向けて急成長を始めたCNFについて、その動向を探る。

 2030年に国内において1兆円市場への成長を見込む─。経済産業省がこう期待する新材料がある。セルロースナノファイバー(CNF)だ(図1)。CNFは今、実用化に向けて加速している。さまざまな業種の企業がCNFを応用した製品の開発に力を入れ始めたからだ。 CNFは、植物の主成分の1つであるセルロースを使った繊維状の材料だ。木材などを化学的、もしくは機械的に処理することでセルロースを抽出し、細かくほぐして直径が数~数十nm、長さが0.5~数μmの極めて細い繊維にしている。

図1 セルロースナノファイバー(CNF)とその特性
図1 セルロースナノファイバー(CNF)とその特性
(a)がCNF(詳しくはTEMPO酸化CNF)の写真。CNFは直径が数〜数十nmで、長さが0.5〜数μmの植物由来の繊維。さまざまな特性を備える(b)。
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