AgペーストやAgインクなど、回路を印刷する材料の技術開発が盛んになってきた。想定用途も拡大し、導電性インク事業に参入するベンチャー企業、そして異業種からの参入が相次いでいる。導電性インクを利用して多層配線基板を印刷可能な3Dプリンターが登場した。今後のエレクトロニクス製品の設計や製造を、“ 印刷事業” に変えていく可能性がある。

 配線や回路パターンなどを印刷技術で形成するための導電性ペーストや導電性インク事業に参入する動きが激しくなってきた。この3年ほどの間に日本だけで銀(Ag)ナノインク技術の開発に取り組む大学発のベンチャー3社が次々に設立された。他に、起業はしなくても大学で開発した技術を企業で生かそうという動きは少なくとも3件ある。

 大学発ベンチャーの1社、C-INK(旧コロイダル・インク) 代表取締役社長の金原正幸氏は、独自のAgナノインク技術を岡山大学の研究室で開発。当初は大学の研究者と社長の2足のわらじを履いていたが、既に大学の職を辞して退路を断ち、この事業の可能性に賭けるという。

 ベンチャー企業だけでなく、今後の市場拡大を見込む企業からの異業種参入も増えている。石油化学製品やロケット向け燃料などを手掛ける日油や接着剤の老舗であるセメダイン、半導体の後工程でめっきなどを手掛けている石原ケミカル(旧石原薬品)などもAgペースト/インクや銅(Cu)ペーストで参戦しつつある。海外でも同様な動きがある。日油 研究本部 先端技術研究所 主幹担当グループリーダーの澤田公平氏は「新しい製品ジャンルを作りたい」と意気込む。