「ようやく初飛行できてほっとしているが、文字通りここから始まる。これから数千時間の飛行試験、型式証明などの道のりが続いていく」。2015年11月11日の「MRJ」初飛行後の記者会見で、三菱航空機社長の森本浩通氏は喜びを語るのと同時に、残された課題を思い、気を引き締めていた。

 MRJが初飛行しても開発は道半ばの段階にあるからだ。地上試験、飛行試験を繰り返して、さまざまな課題を見つけ、機体の設計にフィードバックして改修を重ねる。さらに日本や米国の航空当局の「型式証明」と呼ばれる認証を受ける必要がある。

 三菱航空機と三菱重工業はMRJの飛行試験1号機から5号機までの組み立てを小牧南工場(愛知県豊山町)で進めてきた(図1)。初飛行した1号機など多くの機体が完成しつつある。これら5機に加えて、地上試験用に実機と同等の機能を有する2機の機体も組み立てている。

図1 製造中のMRJの機体
図1 製造中のMRJの機体
複数の飛行試験機の組み立てが同時平行で進んでいる。
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 地上試験機2機のうち、既に完成している「静強度試験機」では機体に予想される最大荷重(制限荷重)や、その1.5倍の荷重に耐えられるかなどの検証を始めている*1。もう1機の「疲労強度試験機」では、設計寿命の2倍以上の荷重を何度も付加し、機体に疲労に伴う損傷が発生しないことなどを確認する。

*1 MRJの強度試験の設備は、100本を超えるアクチュエーターを同期させて制御できる多チャンネル荷重負荷制御システムを備えている。主翼、胴体、垂直尾翼、水平尾翼取付部、エンジン取付部、脚取付部などの強度を試験する。変位を変位計で計測し、構造に生じるひずみは、ひずみゲージにより計測する。データを取得する点数は数千点規模になるという。