三井化学が、金属との接合・接着に利用できる樹脂の選択肢を広げている。軽量化のために炭素繊維強化樹脂(CFRP)を、低コストのためにポリプロピレン(PP)を積極的に異種材料接合・接着に使用し、設計の自由度を高めようとしているのだ。

 同社は、金属と樹脂の異種材料接合・接着技術を開発し、その技術や接合・接着させた部品を「ポリメタック」と名付けて販売する。実績もある。エアロセンス(本社東京)が開発した自律型無人航空機(ドローン)の骨格にポリメタックが採用された(図1)。中空円筒(パイプ)状のCFRPと削り出しのアルミ合金製ジョイントをくっつけたシンプルな骨格(図2)。鋼材とボルトやナットによる締結で造っていた従来の骨格と比べて、ジョイントの部品点数を約20から1に減らした。これにより、ジョイントの質量を従来の50%に抑えた。加えて、鋼からCFRPへの置き換えによる軽量化により、ドローンの想定飛行距離を4割も伸ばすことができた。

図1 エアロセンスの自律型無人航空機(ドローン)
図1 エアロセンスの自律型無人航空機(ドローン)
軽量化した骨格に三井化学の異種材料接合・接着技術を採用した。
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図2 ドローンの骨格
図2 ドローンの骨格
パイプ状のCFRPとアルミ合金製ジョイントで軽い骨格を実現。アルミ合金製ジョイントの接合・接着面を表面処理した後、接着剤を使うことでアルミ合金製ジョイントとCFRPを強固にくっつけた。
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 ポリメタックは、大成プラス(本社東京)からライセンスを得て導入した技術に、三井化学が「新たな技術を加えたもの」(同社理事新自動車材開発室長の平原彰男氏)。金属の表面にエッチングに近い薬液処理を施し、nm~μmオーダーの微細な孔を形成する。この微細孔の大きさや形状は、金属や、接合・接着対象の樹脂に応じて最適に制御する。微細孔の形状はストレートではなく、トルネード状であることが特徴の1つだ。これにより、微細孔に入り込んだ樹脂や接着剤が抜けにくいアンカー効果が働き、高い強度を実現できる。