「我々の目的である遠隔地での調査/輸送に対し、非常に大きなメリットを感じた。他社に先駆けた新しい技術が、差異化につながったと考える」。こう語るのは、ソニーモバイルコミュニケーションズ(本社東京)とZMP(同)が共同出資する、ドローン事業の新会社エアロセンス(同)で社長兼CEOを務める谷口恒氏である。同社は、2015年8月に報道機関向けの発表会で自社製ドローンを披露する際、炭素繊維強化樹脂(CFRP)をアルミニウム合金に強固に固定する、新しい異種材料接合・接着技術を使っていることを明らかにした。

 エアロセンスはさまざまな接合条件において、接合強度の試験を実施して特性を確認した後、必要十分な強度が得られる最軽量のジョイントを設計。大幅な軽量化により、航続距離を最大40%延長できるようになった(図1)。

図1 エアロセンスの事業発表会の様子
図1 エアロセンスの事業発表会の様子
事業用のドローンに採用した、CFRPとアルミニウム合金の接合・接着技術「ポリメタック」についても説明があった。図中のコメントはエアロセンス代表取締役社長兼CEOの谷口恒氏(左から2番目)が発表会後に述べたもの。(写真:日本経済新聞社)
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 この接合・接着技術「ポリメタック」を提供し、説明会に同席した三井化学の担当者には、説明終了後に報道関係者が殺到。「担当者は2カ所に分かれて、それぞれ質問者の列に対応しなければならなかった」(三井化学)というほど関心を集めた。

 接合・接着の技術は、本来はユーザー(最終製品の利用者など)からは見えない、縁の下の力持ちといえる存在である。しかし新たな異種材料の接合・接着技術がもたらすものは、それまで不可能だった材料の組み合わせによる、これまでにない機能や性能の実現だ。すなわち、最終製品のメーカーにとっては、単に材料をくっつけるための技術というよりも、製品の付加価値を高めるための技術になっている。