IT(情報技術)の進化によって、コンピューターやインターネットの世界と現実空間は融合していく。コンピューターの中に閉じていた世界が、我々が生活する物理空間に染みだしてくる。その基盤となるのが「センサーネットワーク」だ。今後の製品やサービスの開発にはセンサーネットワークの理解が欠かせない。その基本思想と技術を6回にわたり解説する。(本誌)
センサーネットワークは、現実空間に無数に配置されたセンサーから情報を取り込んで活用するシステムである。その目的は、現実空間のあらゆることをプログラマブルにしてコントロールすることだ。
この考え方の典型が、21世紀初めに米Universityof California, Berkeleyの研究者が提案した「Smart Dust」に見られる。空中に無数に浮遊するホコリのようなデバイスの一つひとつがセンサーノードであり、現実空間のさまざまな情報を捉えて多様な入力をもたらすという概念である。
このような技術はまだ実現していないが、小型センサーを用いて空間の情報を捉える技術的研究から、新たなセンサーネットワーク構築における課題が見えてきた。ハードリアルタイム性注1)、消費電力注2)、膨大なデータ量注3)などである。いずれもITの高度化の課題と同じ方向性のテーマである。