ここ数年の世界的な動きとして、製造業ではビッグデータ分析やIoT(Internet of Things)などの高度なIT活用によって「ものづくり」を「価値づくり」に進化させようとしている。ドイツ政府の進める「Industrie 4.0(インダストリー4.0)」や米General Electric(GE)社の提唱する「Industrial Internet」は、その表れの一端といえよう(図1)。
このような動きは、一企業や一国の活動にとどまらない。例えば、GE社は「Industrial Internet Consortium(IIC)」を立ち上げて仲間づくりを呼び掛けており、参加した企業・団体は世界中で既に300社を超えている。
世界の潮流に遅れまいと、日本の政府や大手企業も情報収集や分析・検討に余念がなく、その熱意たるや他の先進諸国をはるかに上回る勢いすら感じる。筆者の知人のドイツ人コンサルタントと話すと、「日本人の方がよほど我が国のインダストリー4.0に詳しいみたいだね」などと冗談めかした返事が返ってくるほどだ。
しかし、果たして私たちはその本質的な変化を理解し、きちんと向き合っているのだろうか。例によって、受け身の姿勢のまま一過性のはやり廃りとしてやり過ごすうちに外堀が埋められ、気が付くと高い代償を払って使わざるを得ない仕組みやルールに包囲されてしまうのではないだろうか。
こうした漠然とした危機意識に基づいて、日本の政府や企業が敏感に反応しているというのが、インダストリー4.0をはじめとしたIoTブームの実態ではないかと考える。