電力の制御や供給などを担うパワーデバイス。このうち、今後高い市場成長が見込める、IGBTやSiC、GaNといった耐圧600V以上の高耐圧パワーデバイス業界にM&Aや水平分業化の波が押し寄せている。この動きの先にあるのは汎用化の進展だ。これまで「高嶺の花」だった高耐圧パワーデバイスが、より安価に、使いやすくなる。

 世界中で広がる省エネルギー化の動きに後押しされる形で、機器の電力を制御するパワー半導体(パワーデバイス)の市場は着実に伸びる。2015年に約2兆6561億円だったパワーデバイスの世界市場規模は、2020年に対2015年比で14.6%増の3兆447億円に成長する見込みだ(富士経済の調べ)。

 とりわけ成長が著しい用途が、「産業」、「自動車・電装」、太陽光・風力発電などの「新エネルギー」の3分野である(図1)。例えば、2020年の分野別市場規模を見ると、新エネルギー向けが2015年比で55%増、産業向けが35%増、自動車・電装向けが同26%増と、パワーデバイス全体の市場の伸びを大きく上回って成長する。

図1 成長分野に向けてパワー半導体業界が大きく動く
図1 成長分野に向けてパワー半導体業界が大きく動く
産業機器や自動車、太陽光発電や風力発電などの「新エネルギー」、鉄道分野などに向けたパワーデバイス(レギュレータICやパワーモジュール、ディスクリート製品など)市場は、今後も安定的に成長する見込みである。こうした市場成長に伴い、パワーデバイスの汎用化が進展しそうだ。M&Aによる製品ポートフォリオの拡充や、設計と製造の水平分業化の進展、さらには中国企業をはじめとする新興勢力の台頭などが後押しする。 (市場データは富士経済)
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 新エネルギー向けでは、太陽光発電用パワーコンディショナー(パワコン)向けの需要が高く、今後風力発電システムでの採用拡大によりパワーデバイスの市場成長が続く。自動車向けでは、電気自動車(EV)などの駆動用インバーターで採用が急増するとともに、EVやプラグインハイブリッド車(PHEV)用の急速充電スタンドや車載充電器向けなどの需要が大きく伸びていく。