成長分野へと舵を切る電機各社だが、そこで働く人の将来に対する懸念は根強い。リスク要因として「オープンイノベーションに向かない組織風土」が多く挙がった。従来の終身雇用にこだわらず、転職や起業を考える人も増えているようだ。

図1 国内市場の縮小を懸念
図1 国内市場の縮小を懸念
5~10年後の日本の電子産業について聞いた。「国内市場は縮小する」と答えた回答者が多かった。(図:本誌のアンケートを基に作成)
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 第1部では将来の技術トレンドや技術開発の方向性について読者の考えや意見をまとめたが、日本のエレクトロニクス業界は今後も成長していけるのか。今回のアンケートで5~10年後の日本の電子産業の成長について聞いたところ、「国内市場は縮小する」という回答が大勢を占めたが、産業全体が成長するか否かは意見が分かれた(図1)。約35%と最も割合が高かったのが「国内市場は縮小するが輸出に軸足をおいて成長する」である。実際に電機メーカーの多くが、海外市場の開拓に注力している。

 例えば、日立製作所は2012年に英国で鉄道車両の更新事業を約1兆円で受注したことを足掛かりに、鉄道関連事業の海外展開を加速している。2015年2月には、イタリアFinmeccanica社の信号制御システムや鉄道車両の事業を買収すると発表した。買収金額は約2600億円になる見込みだ。

 民生機器メーカーでは、パナソニックが海外でのM&Aや拠点強化を進めている。2014年2月にトルコの大手配線機具メーカーであるViko Elektrik ve Elektronik Endüstrisi Sanayi ve Ticaret Anonim Şirketi社を約460億円で買収。2015年4月には、マレーシアにアジアの家電事業を統括するPanasonic Appliances Asia Pacific社を設立した。400人規模の開発人員を配置して現地で商品企画から生産、販売までを一貫して行う。また同月に中国にも家電事業を統括するPanasonic Appliances China社を設立した。