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UXデザインの基礎をわかりやすく解説する連載の第4回。今回は、ユーザーの意欲が製品やサービスの利用体験を大きく左右することを指摘する。著者らの研究によれば、意欲を構成する要因は製品関与と自己効力感の2つであり、この2軸に基づいてユーザーを分類する「SEPIA法」を開発した。SEPIA法は、長期の利用シナリオの構築や、現場におけるUXの分析などに活用できる。(本誌)

 ユーザーに与える体験価値を考える上で非常に重要なのが、現実のユーザーを知ることである。たとえ同じ製品やサービスを使っていても、ユーザーの特性によって、感じる価値は大きく変わってくるからだ。ユーザーの体験価値を大きく左右する要因の1つに、ユーザーの意欲がある。ここでは意欲に注目してユーザーを分類し、UXデザインに役立てる手法を紹介する。

 まずは、筆者自身の体験から、意欲がどのように体験価値に影響を与えるのかを説明したい。私は1997~2001年ごろ、BSデジタルのデータ放送のインタフェースデザインに関する仕事に携わっていた。ある時、私が実家に帰省すると、新しく購入したデジタルテレビを前に母が「私、データ放送が使えるの」とうれしそうに報告してきた。私がデータ放送の仕事をしていたのを知っていたので、しゃべりたかったのだろう。職業柄か、私は思わずユーザー調査を始めてしまった。

 「データ放送が使えるって、どういうこと?」

 「テレビで映画を見ている最中にDボタンを押すと粗筋が読めるの。だから、ちょっと見逃しちゃっても内容が分かる。すごいのよ、これ。買ってよかったわ」