スマート工場では、生産性と柔軟性を高い次元で両立させることが求められる。必ずしも工場から人を不要にするような取り組みではないが、ロボットによる自動化を進めることは不可欠だろう。

 最大の課題は柔軟性だ。現在の産業用ロボットは、長期間にわたって同じ作業を繰り返すような用途では効果を発揮するが、短期間で作業が頻繁に変わるような用途には向かない。従って、ロボットの用途は自動車ボディーの溶接ラインなど一部の工程に限られていた。

 こうした現状を打破すべく、ロボットの用途を広げるための技術が日本から次々と登場している。いずれも、ロボットの制御に大幅な革新をもたらす技術だ。

 細かな部品が乱雑に入っている箱から、部品を1個ずつ取り出し、別の箱に運ぶ──。MUJIN(本社東京)が開発した「ピックワーカー」は、バラ積み部品のピッキングに特化したロボットシステムだ(図1)。最大の特徴は、事前の教示(ティーチング)がほとんど要らないことである。

図1 MUJINの「ピックワーカー」
図1 MUJINの「ピックワーカー」
ティーチングなしでのピッキングを可能にしている。
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 一般に、ロボットに何らかの作業をさせたい場合、あらかじめ事前にロボットに作業を“覚えさせる”必要がある。具体的には、人が手でロボットを動かしたり、専用の制御機器(ペンダント)で操作したりして、その作業を実施するための動作プログラムを生成する。これがティーチングだ。ピックワーカーでは、このティーチングを不要にした。