2016年4月に発覚した三菱自動車の燃費不正は、日産自動車による買収に発展した。同社は会社が存続できなくなるような不正をなぜ起こしたのか。そこには、技術者を不正へと駆り立てる企業体質やリソース不足といった要因が潜んでいた。本誌が実施した技術者へのアンケート調査でも一歩間違えれば、こうした不正が他でも起こる可能性が見えてきた。

 「必要以上にいい数字を出したら、また無理な仕事を押しつけられると思った」。2016年4月20日に発覚した三菱自動車の燃費不正において、意図的に燃費を低く見せるために走行抵抗値を改ざんしていた同社子会社の三菱自動車エンジニアリング(MAE)の担当者の言葉だ。同担当者は国土交通省の立ち入り検査の中でこう打ち明けたとされる。

 不正の代償は高くついた。社長の相川哲郎氏の辞任だけでなく、三菱主導の再建がかなわず、日産自動車の傘下に入らざるを得なくなった(図1)。会社存続の危機に及んだのである。改めて燃費値を測り直した結果、申告していた値よりも5~16%低かった。ドイツVolkswagen社の排ガス不正に匹敵するほどの大事件に発展したのだ。さらに、同不正を受けた国交省によるヒアリングで、スズキの燃費不正も発覚し、日本の自動車業界の信頼が失墜した。

図1 三菱は日産の傘下で再建へ
図1 三菱は日産の傘下で再建へ
日産で開発部門トップを務めた山下光彦氏が三菱の副社長に就任。2016年8月2日に会見し、開発現場におけるリソース不足の実態や再発防止に向けた考え方を明かした。
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