3Dプリンターなどを使い、個人が簡単にハードウエアを試作して、生産受託メーカーを使って量産できる新しいものづくりの時代がやってくる──。

 2012年秋に米WIRED誌の元編集長であるChris Anderson氏が、著書の『MAKERS-21 世紀の産業革命が始まる』(NHK出版)でこう主張してから3年半が過ぎた。

 日本でも小規模なものづくりベンチャー、すなわちメイカーズの時代がやってくると注目を集め、ユニークなものづくりのアイデアを検討する「ハッカソン」などのイベントがさまざまな場所で開催されるようになった。

 当初は「誰でも簡単にものづくりができ、メーカーになれる」というイメージが先行したが、実際には素人が3Dプリンターなどで作製した試作品は、構造が生産に不向きだったり、安価に製造できる材料を使っていなかったりして、量産にハードルがあった。

 「試作品を公開して不特定多数から資金を集めるクラウドファンディングに成功したが、技術的な問題から量産に協力してくれる企業が見つからずに返金する」といったケースも出たほどだ。

 さらに2014年ごろまでは、個人が利用できる3Dプリンターやレーザー加工機を備えたものづくり拠点の数が少なく、ものづくりベンチャーが試作品を公開して支援者を募集するクラウドファンディングの仕組みも未発達だった。

 だが、これらの課題は次第に克服され、最近になって、ものづくりベンチャーが起業しやすい環境は整いつつある。ものづくり拠点は東京だけなくて、全国に広がってきた。クラウドファンディングも徐々に普及し、市民権を得ようとしている。ものづくりベンチャーの設計や量産を支援する中小企業も増加している。

 さまざまな条件が整う中、メイカーズの第2幕がいよいよ始まろうとしている。このうねりの中で、日本のものづくりベンチャーはどのように変化しているのか。ブームは一過性ではなく、本物なのか。本特集のために取材班は数多くの企業を取材。日本のものづくりベンチャーの世界で5つの地殻変動が起き、ものづくりのルールが変わりつつあることを感じた。