高効率と高精度のモーター制御を実現するには、作動状態の正確な把握が不可欠である。しかし、センサーなどを用いれば、工程やコストが増加する原因となりかねない。今回は、三相モーターの作動状態を把握する原理と、スイッチトリラクタンスモーター(SRモーター)の高度制御を実現する手法について解説する。(本誌)

図1 三相座標系とq軸、d軸の関係
図1 三相座標系とq軸、d軸の関係
ローターの磁束を、q軸(N極、S極の結合面方向)とd軸(N極の磁束方向)の2軸で捉える。
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 永久磁石同期モーター(PMSM)では、ローターの永久磁石の磁束とU、V、Wの各相のコイルが作る磁束の吸引・反発によって、トルクが発生する。このとき、ローターの磁束はN極とS極の結合面の磁束方向(q軸)と、N極の磁束方向(d軸)の2軸で捉えられる(図1)。

永久磁石同期モーター(PMSM:Permanent Magnet Synchronous Motor)=永久磁石(強磁性体)を使用した同期モーターで、方形波電圧や正弦波電圧を巻き線に印加して回転磁界を作ることでローターを駆動する。ローターを回転させたときに巻き線に誘起する起電圧が正弦波になる(正弦波着磁)モーターと、起電圧が台形波になる(方形波着磁)モーターがある。多くの場合、方形波着磁のモーターは、ブラシレスDCモーターと呼ばれることが多く、永久磁石同期モーターと区別して呼ばれることが多い。ただし、この呼称は必ずしも一般的ではないため、実際には仕様などの確認が重要である。

 一方、コイルU、V、Wによって発生する磁束は、120度ずつ位相のずれた電流iu、iv、iwによって発生する。特定の時刻tについて見ると、図2のような値となる。これらを120度の3軸上に投影してベクトル合成した合成磁束が、時刻tにおける磁束(図3の太い実線の矢印)となる。時刻が変化するとiu、iv、iwが変化し、結果として大きさ一定の磁束が回転してローターを回転させる。モーター制御では基本的に、この磁束の方向をローターのd軸と直交するように制御する。

図2 三相電流
図2 三相電流
120度ずつ位相のずれた電流iu、iv、iwによって巻き線U、V、Wそれぞれに磁束が発生する。
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図3 三相電流による回転磁界
図3 三相電流による回転磁界
特定の時刻t について、三相の電流による磁束を合成した磁束が回転磁界で、これをローターのd軸と直交するように制御する。
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