優れた製品は何が生み出すのだろうか。設計力、生産力、マネジメント力…。これらももちろん重要だが、日本企業には、より一層大切にするものがある。それは、技術者の強い思いや情熱、意欲、すなわち「ものづくり魂」だ。技術者が生み出す製品は単なる「物質」ではない。技術者の知恵や努力、汗、そして涙の結晶なのである。ここまでして初めて製品が輝きを放つようになる。これを可能にするのは、個々の技術者が心に宿したものづくり魂以外にない。日本の製造業を引っ張る技術者への取材と調査から、熱きものづくり魂に迫った。
私のものづくり魂
目次
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基本を受け継ぎ、柔軟に探求
製造業を取り巻く環境は急激に変化しており、技術者は考え方を変えるべき。ただし、根本の思想は、時代を超えて引き継ぐべきものがある─。設計・生産の技術者たちが考える「ものづくり魂」の在り方は、これまでに確立した伝統や基本の上に、柔軟な探求心が加わったものと言えそうだ。日経ものづくり
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ユーザーの声が技術者のやる気を引き出す
岡本 直也(ソニー R&Dプラットフォーム システム研究開発本部 応用技術開発部門 ソリューション開発1部 統括部長)
製品やサービスを開発の上流段階で先進ユーザーに使ってもらい、その意見を反映させながら価値を練り上げる。ソニーがそんな新しい研究開発の取り組み「Future Lab Program」(以下Future Lab)を進めている。これを率いるのが岡本氏だ。2016年3月には、同プログラムの第1弾コンセプトと…日経ものづくり
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読者が考えるものづくり魂
アンケートの自由記述から
日経ものづくり
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顧客価値を見いだす眼力を磨くべし
堀水 修(日立製作所 モノづくり戦略本部 担当本部長 兼 企画部長)
IoT(Internet of Things)によるデジタル技術を駆使した「つながる製造業」実現に向けた取り組みが活発化している。日本において業種・業界横断でつながる工場の取り組みをけん引しているのが、インダストリアル・バリューチェーン・イニシアティブ(IVI)。原氏は、日立製作所における工場の競争…日経ものづくり
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運転士への声掛けだって大事な仕事
富田 優(鉄道総合技術研究所 材料技術研究部 超電導応用研究室長)
電気抵抗がゼロになる超電導技術には大きな期待が持たれているが、実質的には応用例はまだリニアモーターカーとMR(I 磁気共鳴画像)装置ぐらいという。それを直流電化の在来線の送電(饋(き) 電)に応用し、エネルギー効率を大きく高めようとする研究が進んでいる。超電導ケーブルの製作に当たっては、さまざまな分…日経ものづくり
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「第2のソニー」を生み出したい
長谷川 順一(Preferred Networks 取締役 最高執行責任者)
産業の盛衰が激しい中、新たな技術を生み出すベンチャー企業の社会的な役割は大きい。機械学習やディープラーニングなどの技術で世界最先端を走るPreferred Networks(本社東京、PFN)の長谷川氏はもともとソニーにいた技術者だったが、PFNのとがった技術にほれ込んで転職を決めた。経験を積んだ技…日経ものづくり
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「魂」を込めなければ1μm以下は無理
植武 晴彦(キヤノンモールド 技能伝承部 課長)
卓越した技術を持つ「現代の名工」。2016年度に金属特殊加工機工分野で選ばれたのが、植武氏だ。治具研削盤を巧みに操り、目で見極めることすら難しい1μm以下の「超高精度」加工をこなす。しかも、1度のミスも犯さない。生産現場での長年の経験はもちろん、「魂」を込めて加工に挑むことが常人離れした技能を可能に…日経ものづくり
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貪欲に学び続ける技術者でありたい
山田 喜久(アイシン・エィ・ダブリュ 生産技術本部 工機部 創作グループ 主任研究員)
自らの専門分野を深めるだけではなく、異分野の見識を広める重要性が増している。アイシン・エィ・ダブリュ(本社愛知県安城市)の山田氏は2016年度、産業用機械組立工として「現代の名工」に選ばれた。電気や機械、機構の知識を組み合わせて設備製作に取り組んできたからだ。電気系出身の同氏は、専門外の機械系に立ち…日経ものづくり
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努力しないと技術はすぐに消える
國中 均(宇宙航空研究開発機構(JAXA)宇宙科学研究所 宇宙飛翔工学研究系・教授)
宇宙空間を電気の力で推進するイオンエンジンを実現し、2003年に打ち上げた小惑星探査機「はやぶさ」に搭載。その技術は2014年に打ち上げられ、小惑星「Ryugu」へ2018年半ばに到達予定の「はやぶさ2」にも引き継がれた。はやぶさからはやぶさ2へとイオンエンジンの技術を維持、継承するためには、さまざ…日経ものづくり
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失われる寸前の技術を復活させて伝承
安孫子 大慶(ぺんてる シャープ企画開発部 シャープ開発課 主任専門職)
シャープ芯を使えるプロッターなどに使われていた、自動芯出しのための「ボールチャック機構」。ぺんてるは、芯径0.2mm、0.3mmのシャープペンにこの技術を初めて適用した。知る人が少なくなった技術を復活させるため、かつての製品を知るベテラン技術者が約20年ぶりに商品開発に起用された。日経ものづくり
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スピーディーな開発、その強みは失わせない
原 英克(アイリスオーヤマ 家電開発部 大阪R&Dセンター 統括マネージャー)
IH調理器や小型布団乾燥機など、手ごろな価格のさまざまな家電を開発し、製品ラインアップを拡充しているアイリスオーヤマ。そんな家電開発を率いるのが原氏だ。生活用品メーカーから家電メーカーへの変身を図るべく、中途技術者を大量採用するなどして急速に家電製品の開発力を強化している。日経ものづくり
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設備や製品は愛情を注ぐべき存在
加藤 充(デンソー 生産革新センター ダントツ工場推進部長)
2020年までに世界の130工場を全てIoT(Internet of Things)でつなげる計画のデンソー。IoTの導入により、突出した付加価値や低コストによるものづくりを行う「ダントツ工場」を目指す。それに向けて社内を引っ張るのが加藤氏だ。同氏はダントツ工場においても愛情が大切と語る。工場の設備…日経ものづくり
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失敗してもいい、とにかく試せ
松本 健一(Cerevo 取締役 CTO)
日本では小さな市場でも、それを世界中に拡大してみればある程度の数量が見込める。そんな市場を目指した製品を次々と開発することで注目を集めるのが、2008年に設立されたCerevo(本社東京)である。同社でCTOを務める松本氏は現在、全ての製品の開発を統括する立場。次々と斬新な製品を生み出す真髄を、失敗…日経ものづくり