米運輸省道路交通安全局(NHTSA)が示した見解に、自動車業界が騒然となっている。2016年2月、人工知能(AI)を運転者と見なせると示唆したのだ。「AI=運転者」が認められれば、完全自動運転車は世界中で走り回れるようになる。2020年の実用化を公言する米Google社の野望が、現実味を帯びてきた。

 「人間ではないものが車両を運転できるならば、運転するものは『運転者』とみなすのが妥当」――。

 完全自動運転車の実現を目指す米Google社が、米運輸省道路交通安全局(NHTSA)を動かした(図1)。自動運転用ソフトウエアを「運転者」とみなせる可能性があるとの見解を、NHTSAから引き出したのだ。現行の条約では、運転者がいない車両は公道を走れないとされている(図2)。

図1 NHTSAがGoogle社の問い合わせに回答
図1 NHTSAがGoogle社の問い合わせに回答
2016年2月4日、米運輸省道路交通安全局(NHTSA)が自動運転用ソフトウエアを「運転者」とみなせる可能性があるとの見解を示した。Google社で完全自動運転車の開発を率いるChris Urmson氏に書面で回答した。
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図2 現行の条約では運転者は「人」
図2 現行の条約では運転者は「人」
無人運転の実現には、米国や日本などが加盟するジュネーブ条約や、欧州諸国が加盟するウィーン条約の改定が必須とされてきた。
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 NHTSAは2016年2月4日、Google社で完全自動運転車の開発を率いるChris Urmson氏に書面で回答した。Urmson氏は2015年11月、Google社が開発中のステアリングやブレーキペダルのない完全自動運転車(グーグルカー)の安全基準の解釈について、NHTSAに問い合わせていた。

 NHTSAは、「Google社が十分な情報と根拠を提供する」ことを前提に、人工知能(AI)と位置付ける自動運転用ソフトウエア「SDS(Self-Driving System)」を「運転者」とみなせる可能性があると答えた。