日本の製造業が今、岐路に立っている。「技術力があるのに儲からない」という事態に多くの企業が飲み込まれつつあり、そこから脱せるか否かという問題に直面しているのだ。この状況を打開しようと、先行する企業がものづくり戦略を一新し始めた。新戦略の軸となるのは、自社の強いコア技術(DNA)に、外部から全く異なる種類のDNA(技術、ノウハウ、知恵、企画など)を大胆に取り込み、掛け合わせる手法である。技術を価値に変えようと挑む企業のものづくり戦略に迫る。
技術を価値に変える
我が社の新戦略
目次
-
外から「DNA」を取り込み開発加速、生産力は壁を壊し全体最適で高める
「技術力は高いのに利益につながっていない」──。本号の冒頭のコラム「挑戦者」で、経済産業省 製造産業局長の糟谷敏秀氏は日本企業の現状をこう評した。優れたコア技術を持ち、その技術を磨くことで利益を上げてきたこれまでの手法が通用しづらくなってきたのだ。日経ものづくり
-
顧客・パートナーのニーズを知り、新たな応用分野で価値を提供
富士フイルム
富士フイルムグループが売上高と利益を順調に伸ばしている(図1)。売上高営業利益率は、2011年度から4年連続で伸びており、2015年度(予想)は7.4%に達する。デジタルカメラの高級機や、医療機器、産業用機材、電子材料などの事業が好調だという。日経ものづくり
-
人や機械がつながるIoT時代見据え、コア技術を活用しつつ他社と連携
ファナック
2016年3月期は減益の見通しとはいえ、依然30%以上の高い営業利益率を誇る産業用ロボットメーカーの雄、ファナック。同社の戦略がいま大きな転換点を迎えている。民間として国内で初めてNCとサーボ機構の開発に成功した同社は、工作機械やロボットで強いコア技術を有する。これまではその独自の技術を活かして商品…日経ものづくり
-
革靴へのこだわりを持ちつつも、最新の接合・材料技術を投入
リーガル コーポレーション
リーガル コーポレーションは、本物の牛革を使ったフォーマルな高級靴を、伝統的な製造方法で造ることによってブランドを確立している靴メーカーだ。すなわち、牛革や靴の製法に対する知見や技術については社内に1902(明治35)年以来の蓄積がある。半面、それ以外の技術が豊富にあるというわけではない。日経ものづくり
-
塗装レスで金属調の樹脂部品を実現、大田区町工場が挑むグローバル展開
日進工業
他社にない高い成形技術を基に、欧州から外観デザインの感覚(センス)を取り込んでグローバル展開を図っている中小企業が東京大田区にある。樹脂成形メーカーの日進工業(本社東京)だ。高い技術力を備えた中小企業は日本に多いが、世界を相手にビジネスを展開する企業は少ない。これに対し、日進工業は従業員が22人と小…日経ものづくり
-
共通化と自由度で狙う「ホンダらしさ」、日本の造り方と世界の方法を融合
ホンダ
共通化と自由度の融合──。ホンダのグローバル生産戦略の方向性を一言で表すとこうなる。日本で考えた効率的なクルマの造り方をベースにしつつも、国境の壁を壊して世界の各地域で考案された特有の造り方を取り込んで、柔軟性を備えた競争力の高い生産ラインの構築を目指すのである(図1)。日経ものづくり
-
国も事業領域も越えて知恵を結集、グローバルで拠点の収益力を底上げ
パナソニック
4カンパニー・37事業分野を抱え世界中におよそ300の拠点を持つパナソニック。幅広い分野と地域で事業展開する同社は、強い製造拠点づくりをグローバルで目指す「MIT(Manufacturing Innovation Toward)-2018」と呼ぶ全社活動を2015年から展開している。日本、上海、シン…日経ものづくり