発生から約5カ月、韓国Samsung Electronics 社が明かした「Galaxy Note7」発火問題の調査結果から深層が見えてきた。直接の問題は電池だが、本質的な課題は調達部品の管理体制などにあったとみられる。同社を含むエレクトロニクス業界の対策になるのは、調達先の設計・製造工程に適切に介入できる専門力の取り込みだ。

 「顧客の皆様および取引先の皆様に深くお詫び申し上げます」。2017年1月23日、韓国Samsung Electronics社が本社で開催した、スマートフォン「Galaxy Note7」の発火事故に関する原因説明の会見は、同社無線事業部長 高東真氏の謝罪の言葉から始まった。

 発火事故は、2016年8月19日の発売から1週間ほどで発覚した。発売1カ月後には1度リコールされ、改良を加えて再度販売を開始するも、再び事故が相次ぎ、発売2カ月足らずで製造・販売中止に追い込まれた。同社によると、消費者への販売台数は約360万台、うち事故が見つかったのは約330件、発生確率は約0.01%(100ppm)だった注1)。事故を受け、同社は今後の開発方針として「Quality First」と「Meaningful Innovation」を掲げ、安全性を優先する方向へ舵を切ると宣言した(図1)。

注1)会見では販売台数を約300万台としていたが、後日確認したところ、約360万台とのことだった。
図1 Galaxy事故をきっかけに安全性優先へ
図1 Galaxy事故をきっかけに安全性優先へ
Samsung Electronics社は、スマートフォン「Galaxy Note7」の発火事故をきっかけに、安全性を最優先する方向へ舵を切った。同製品は販売から2カ月足らずで製造・販売中止へと追い込まれた。同社は原因調査の報告発表の場で、「Quality First」を掲げた。こうした動きが業界全体へと広がる可能性がある。
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 同端末は、米Apple社の「iPhone 7 Plus」との競合を強く意識して開発されたと推測される(図2)。外形寸法は同程度でありながら、スタイラスペンや虹彩による生体認証といった機能を備えるなど、iPhone 7 Plusを上回る使用・機能を売り物にしていた注2)

注2)Samsung Electronics社が1次リコール後にも行った大規模プロモーションや民生機器の見本市「IFA 2016 」(ドイツ・ベルリン、2016年9月2~7日)での出展状況からは、同端末に対する並々ならぬ力の入れ様がうかがえる。
図2 打倒iPhoneに向けて開発されたGalaxy Note7
図2 打倒iPhoneに向けて開発されたGalaxy Note7
Apple社の「iPhone 7/7 Plus」に先駆けて発売された、Samsung Electronics社の「Galaxy Note7」。iPhone 7 Plusに近い外形寸法にスタイラスペンを内蔵しながら、電池容量など性能の数値上でのリードを狙ったように見える。(写真:Samsung Electronics社)
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