安全対策は、ぶつからないクルマを実現する仕組み作りが柱になる。歩行者死亡事故を減らす自動ブレーキや、自動運転に向けた議論が高まっている。アセスメントでは夜間の歩行者事故低減が課題。自動ブレーキ以外も評価していく方針だ。自動運転では自動操舵の基準作りが鍵となる。

 安全分野では、2030年に向けた自動車アセスメント(JNCAP)と基準の二つの議論が進んでいる。JNCAPは2016年度に歩行者対応自動ブレーキや夜間歩行者の事故軽減システムなどの評価を始める。一方の基準では国土交通省が、2017年を目標に自動操舵のルール作りを進めているほか、2018年にはポールの側面衝突試験が導入される。2030年を見据えた完全自動運転を実現するためにジュネーブ条約改定に向けた議論も始まった。

 「歩行者の死亡事故をどうしたら効果的に減らせるか」――。

 国土交通省と自動車事故対策機構(NASVA)が運営するJNCAPでは、2016年度から歩行者を対象とした自動ブレーキを評価に加える。当初は昼間の性能を評価し、2017~2018年度のできるだけ早い段階で夜間の自動ブレーキ評価も始める計画だ。

 国内の交通事故死亡者は2014年で4113人(図1)。年々減少傾向にある中、歩行者が占める割合は逆に増加傾向にあり、その削減が喫緊の課題となっている。歩行者対応の自動ブレーキを備える車種も増えていることから、安全性の高い車両を評価・公表することで自動ブレーキの普及を後押しする。

図1 交通事故死亡者の推移
図1 交通事故死亡者の推移
死亡者が減少傾向にある中、歩行者の死亡者数の比率は高まる傾向にある。日本は、自動車アセスメント(JNCAP)に、歩行者対応自動ブレーキの評価を加えることで歩行者の死亡者を減らす。(出典:内閣府の交通安全白書)
[画像のクリックで拡大表示]
図2 歩行者の死亡者は夜間が多い
図2 歩行者の死亡者は夜間が多い
夜間は昼間の約2倍になる。年齢別では高齢者が多いことも指摘されている。グラフは2009年の国内の歩行者の死亡者数。(出典:ITARDA)
[画像のクリックで拡大表示]

 歩行者の死亡者の内訳は、夜間が多く昼間の2倍もある(図2)。ただ、最近実用化している歩行者対応の自動ブレーキは、基本的にカメラを使ったもので、昼間の歩行者を対象としている(図3)。カメラは十分な光量がある昼間は認識性能が高いが、夜間は歩行者を検知しにくくなるためだ。

図3 歩行者検知システム
図3 歩行者検知システム
欧州や日本の主要メーカーが、車載カメラなどで歩行者を検知し、自動ブレーキで衝突を回避するシステムを実用化している。
[画像のクリックで拡大表示]