前回に続いてインホイールモーター(IWM)である。IWMには減速機付きとダイレクトドライブ(DD)の2種類がある(図1)。減速機には遊星歯車機構、平行2軸式、サイクロイドなどの実例がある。DDにはインナーローター、アウターローター、アキシャルギャップがある。

図1 IWMの種類
図1 IWMの種類
このうちDDのインナーローター、アキシャルギャップは実例がない。
[画像のクリックで拡大表示]

 まず、減速機を使うか使わないかである。モーターは融通の利かない機械で、寸法が大きければ素直にトルクが大きくなる。モーター本体を大きくしないでトルクを上げるには回転数を上げ、減速機と組み合わせるのが近道だ。

図2 磁界に置いた電線
図2 磁界に置いた電線
誌面と垂直に伝染を配置すると、右ねじの法則により、電流は誌面と垂直に、手前から奥に流れる。
[画像のクリックで拡大表示]

 磁束密度Bの磁界に直交させて電線を置き、電流を流す(図2)。電流をi、電線の長さをLとすると、電線に作用する力Fは、

F=B×i×L  (1)

である。

図3 同期モーターを軸側から見たところ
図3 同期モーターを軸側から見たところ
ここでは電線1本に単純化している。
[画像のクリックで拡大表示]

 この力がローターとステーターが向かい合う面に加わる(図3)。向かい合う面の半径をRとすると、軸に作用するトルクTは、

T=F×R  (2)

だから、(1)を代入して、

T=B×i×L×R  (3)

である。

 ここまでは電線1本に流れる電流iで計算していたが、Rが大きければそれに比例して円周が長くなり、並べられる電線の数が増える。全体の電流をIとすると、

IR(∝は比例を意味する)  (4)

したがって、

TB×L×R2  (5)

 トルクはL×R2に比例する。式の形を見れば分かるように、モーターの体積に比例する。Biが同じ場合、トルクを大きくするにはモーターを大きくするしかない。