海外を中心に盛り上がるVR(Virtual Reality)市場。仮想空間内でモノに触った感覚を提示する「触力覚フィードバック技術」を武器に、この市場を果敢に攻めるのが産業技術総合研究所(産総研)発のベンチャーとして2014年4月に設立されたミライセンスだ。日本の部品メーカーなどと連携して同技術の普及に努め、既に3億円の出資を集めた。同社を設立した中村則雄氏(写真:左)と香田夏雄氏(写真:右)に、起業の経緯や今後の事業戦略を聞いた。

(写真:加藤 康)
(写真:加藤 康)

中村氏:ミライセンスの「3D触力覚技術」の基になった技術は、私が産総研で2000年から研究開発してきたものです。このころから実用化を見据えていました。ただ、「触力覚フィードバック技術」の市場を大きくするには、この技術を生かす電子機器やサービスなどが不可欠です。ですが、そうした市場はしばらく立ち上がりませんでした。

 転機は2010年に訪れました。このころ、大手電機メーカー各社が、3次元(3D)テレビの製品化に動き出したのです。映像がリアルになれば、ユーザーは触りたいと思うはず。そこで、同年に「触れる立体テレビシステム」を発表しました。このシステムの反響は大きく、手応えを感じましたが、残念ながら3Dテレビ市場はしぼんでしまいました。

 次の転機は2014年です。VRがブームになり、そこで再び触力覚フィードバック技術に注目が集まり出した。今こそいいタイミングじゃないか。そう考えて香田とミライセンスを起業しました。