生き残り戦略のポイント
  • セラミックス技術の強みを電動車市場に展開
  • 半導体分野で培ったシート積層技術を活用
  • 産業機器市場で実績を積んで自動車市場へ
企業データ
  • 事業内容:点火プラグなどの製造・販売
  • 売上高:3729億円(連結、2017年3月期)
  • 営業利益:535億円(同上)
  • 従業員数:14926人(連結、2017年3月)

 エンジン用の点火プラグが主力の日本特殊陶業は、セラミックス技術に強みを持つ。ただ、エンジン部品には逆風が吹いていることから、セラミックス技術を生かした次世代自動車向けの全固体電池の開発に力を入れている。

 同社は電気自動車(EV)で不要になる部品への売上依存率が85%と高い。具体的には点火プラグと排気系センサーを合わせた自動車関連事業が売上高の約85%を占める注1)。内燃機関のないEVでは、プラグもセンサーも不要になる。

注1)同社の連結売上高3729億円(2017年3月期)のうち、約52%を点火プラグ、約33%を排気ガス用のセンサー、約15%を半導体パッケージや機械工具が占める。

 ただ、内燃機関を搭載するハイブリッド車(HEV)やプラグインハイブリッド車(PHEV)はこの先も増えるため、「プラグやセンサーの需要はまだ伸びる」(執行役員で技術開発本部本部長の小島多喜男氏)という(図1)。プラグやセンサーの需要がピークアウトする時期は「2040年ごろ」(同氏)と見ている。「だからと言って安心するのではなく、自動車関連事業で利益が出ている今のうちに全固体電池などの新規事業の創出を進める」(同氏)注2)

注2)同社は全固体電池以外にも、次世代自動車向けに二つの取り組みを進めている。一つは燃料電池車(FCV)向けの水素漏れ検知センサーの開発である。すでにホンダの「クラリティ・フューエルセル」に採用されており、今後は検出精度の改善やコスト競争力の強化を図る。もう一つは、第5世代(5G)通信向けのセラミックスパッケージや、LED(発光ダイオード)やLD(レーザーダイオード)を使ったヘッドランプ向けのセラミックス蛍光体の研究開発である。通常は蛍光体に樹脂やガラスを混ぜるが、高出力のLEDやLDでは熱に耐えられない。そこで耐熱性に優れたセラミックス蛍光体を利用する。

 同社はセラミックス技術を環境・エネルギー分野や医療分野にも応用している。環境・エネルギー分野では、セラミックス技術を活かした固体酸化物形燃料電池(SOFC)のセルスタックの研究開発を進める。産業用の円筒形セルに関しては三菱日立パワーシステムズと共同で、平板形セルについては日立造船と共同で研究開発をしている。医療分野では、セラミックス製の人工骨や酸素濃縮装置などに注力している。これまでは主に国内向けに提供していたが、今後は海外にも展開する。

図1 日本特殊陶業執行役員技術開発本部本部長の小島多喜男氏
図1 日本特殊陶業執行役員技術開発本部本部長の小島多喜男氏
「セラミックス技術を活かした全固体電池の開発を進める」。本誌が撮影。
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