前号ではZメカニズム技研が開発した「XY分離クランク機構」を解説した。今回は同社が試作したエンジンを紹介する。XY分離クランクと鏡像配置を組み合わせることで、2気筒でありながら振動を小さくできる。電動車両のレンジエクステンダー(発電用エンジン)への適用を目指す。

 燃費の良いエンジンを実現する方法の一つとして、連接棒(コンロッド)をなくす検討が始まっている。燃費改善という観点では不利になるコンロッドをなくし、気筒の内径(ボア)を小さくしようという発想だ。

 独自の「XY分離クランク機構注1)」を採用してコンロッドのないエンジンを開発するのがZメカニズム技研である。同機構を応用した鏡像配置エンジンとしてU型2気筒、水平対向2気筒の2機種を試作した(図1、2)。試作はしていないが、V型も鏡像配置にできる(図3)。

注1)XY分離クランク機構は、ピストンの往復運動を往復方向(X)と、それと直交する方向(Y)に分離して回転運動に変える。ピストンはコンロッドを押す代わりに直立したピストンロッドを下に押す。

図1 試作した直列2気筒エンジン
図1 試作した直列2気筒エンジン
市販のディーゼルエンジンを改良した。
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図2 試作した水平対向2気筒エンジン
図2 試作した水平対向2気筒エンジン
2本のクランク軸を平行に並べて互いに逆回転させる鏡像配置エンジンである。
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図3 鏡像配置のエンジン
図3 鏡像配置のエンジン
水平対向のほか、U型やV型も可能である。
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 鏡像配置というのはクランク軸を2本平行に並べ、互いに逆回転させるエンジンだ。こうすると振動を打ち消し合うことは分かっていた。それでも自動車に実用例はなかった。2本のクランク軸を1本の出力軸にまとめる必要があるので使いにくいエンジンになる。

 まず大きな歯車が必要だ。エンジンからトーショナルダンパーを介さずに歯車を回すと歯打ち音が心配になる。かといってトーショナルダンパーを入れると、ピストン同士の位相関係がずれて鏡像でなくなる。出力軸が中心から外れた位置にあるため従来のエンジンの配置と合わない。自動車用というより、出力軸2本のまま合流させずに使う船舶用などに向いたエンジンだった。