「日経ものづくり」2017年8月号の特集2「管理されていなかった26年前のプルトニウム」を分割先行公開した中編です。前編はこちら

前回、2017年6月に発生した日本原子力研究開発機構の大洗研究開発センターにおける内部被曝事故の経緯を解説した。今回はなぜ封止していた樹脂バッグが破裂したのか、事故後に実施した内部被曝検査の結果が食い違うのか、原因を探る。

ガスが発生か

図2 貯蔵容器と樹脂製バッグ
図2 貯蔵容器と樹脂製バッグ
ステンレス製の貯蔵容器に、樹脂製バッグに入れた樹脂容器が収められていた。 写真:JAEA
[画像のクリックで拡大表示]

 以下では、なぜ2重の樹脂製バッグが貯蔵容器の蓋を開けた瞬間、膨れ・破損したのか、なぜJAEAによるものと、放医研によるものとで作業者の内部被曝量の検査結果が大きく食い違っているのかについて考察する。

 樹脂製バッグの破裂と放射性物質の飛散については、2017年7月時点でJAEAは原因を抽出・整理中としており、特定していないが、筆者は幾つかの要因による複合事象だと考えている。考えられる要因は次の通りである。

 〔1〕作業していたフード内は負圧になっており、樹脂製バッグは内外の圧力差から膨らんでいた。〔2〕バッグの樹脂が26年の間に経年劣化してもろくなっていた。〔3〕Puのα崩壊によりヘリウム(He)ガスが発生しバッグを膨らませていた。〔4〕26年間も放置していたためにPu酸化物粉末を収納した樹脂製容器の蓋が緩んでおり、粉末が飛散しやすい状態にあった。〔5〕Pu酸化物を固めるために利用した樹脂(固化用樹脂)と放射線の相互作用により、ガスが発生していた。このガス発生はJAEAによる追加実験により確認されている。一方、Pu酸化物と固化用樹脂の化学反応によるガスの発生は、状況や飛散物からして考えにくい。