――遠隔診療の普及策として、未来投資会議では「適切な評価と報酬」「ルールの整備」「標準化」の3つを提言されました。その意図するところを教えてください。

 適切な評価と報酬という点を指摘したのは、診療報酬上のインセンティブを与えることが、遠隔診療の普及の後押しになることは確かだからです。対面診療と同等の評価というわけにはいかないかもしれませんが、何かしらの後押しはあった方がいい。それによって利用がある程度広がらないと、効果検証もできません。あくまでも私見ですが、2018年度診療報酬改定では遠隔診療に対する一定の評価が試験的に導入され、本丸は2020年度改定ではないかと見ています。

 ルールの整備という話をしたのは、遠隔診療には可能性を感じている一方で、それだけに大事に育てなくてはいけないと考えているからです。マンションの一室でひたすら遠隔診療だけをするサービスが現れるのではないかとか、医師や患者のなりすましにはどう対処するのかなど、遠隔診療をめぐる懸念はいろいろとあります。

 最悪のシナリオを考えていては何事も前に進みませんが、遠隔診療がこれから立ち上がろうとするタイミングでおかしなことが起こるのは望ましくない。ある程度のルールを定め、それに従って良い事例を積み重ねていくことが大切でしょう。そういう意味で、ルールづくりが必要という話をしました。

 標準化に関しては、電子カルテなどの例を見ても、いわゆるガラパゴス化が起こりえるということへの懸念を指摘したんです。いったん異なる仕様のシステムが沢山できあがってしまうと、それらを互いに接続することへのインセンティブは働きません。遠隔診療のプラットフォームを当初から標準化することは、実際には難しいでしょう。それでも、ある程度の数が出そろってきた段階で、一定の標準化は進めたほうがいいというのが私の考えです。システムだけでなく、遠隔診療の運用に関しても標準化が必要だと思います。

 遠隔診療は今、すごくいい時期を迎えている。厚生労働省も医師会も、ICT活用に対して前向きな姿勢を示しています。今を逃せば、こうしたチャンスはめぐってこないとも限りません。だからこそ大事に育てていきましょう、と言いたいわけです。